1年で価格が4分の1になったビットコイン
ビットコイン(BTC)の価格が低迷している。2021年11月8日の終値で1ビットコイン6万7526米ドルの史上最高値を付けて以降、ビットコインの対ドルレートは下落に転じた(図表1)。そして、2022年12月31日の終値は1ビットコイン1万6564米ドルまで下落が進んだ。この間、ビットコインの価値は4分の1に暴落したわけだ。
2023年1月に入り、1ビットコイン2万ドルを超えるまで相場が持ち直している。とはいえ、市況がこのまま持ち直していくか定かではない。それではなぜ、ビットコインの相場は暴落し、低迷が続いているのか。最大の理由は、米連銀(FRB)を中心とする世界各国の中銀が、インフレの加速で利上げを進めたことにある。
ビットコインの動きは、いわゆる暗号資産(仮想通貨)が、投機性が極めて強いリスク資産であることを意味している。事実、この間に代表的なリスク資産である株式もまた価格が下落している。とはいえ、例えばダウ平均株価や日経平均株価などの株式指数の下落幅は、ビットコインに比べるとはるかに小さい。
株式には企業の業績という裏打ちがある。法定通貨にもまた、それを発行する国の信用という裏打ちがある。しかし暗号資産には、そうした裏打ちは一切ない。そのため、投資家の思惑で価格は大きく左右され、不安定となる。これまでのビットコインの価格動向は、暗号資産の取引が始まるにあたって叫ばれた懸念が的中するかたちで推移している。
エルサルバドルは多額の含み損を抱えている
ところで、そのビットコインを法定通貨に定めた国として、中米の小国、エルサルバドルがある。エルサルバドルは2021年9月に、世界で初めてビットコインを法定通貨に定めた。エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領はビットコインをエルサルバドルの経済発展の幹に据える戦略を推し進めようとしたわけだが、状況は芳しくないようだ。
最大の失敗は、エルサルバドル政府がビットコインを「高値掴み」したことだ。ビットコインを法定通貨に定めて以降、政府は貴重な外貨でビットコインを断続的に購入してきたが、この間にビットコインの価格は下落が続いた。その結果、エルサルバドルが購入してきたビットコインは、多額の含み損が生じている状態となっている。
具体的にどれだけの損失が発生しているのだろうか。スペインの日刊紙エル・パイス(EL PAiS)は2022年11月14日付の記事で、評価損は7000万米ドルに達したと報じた。
またジョンズ・ホプキンス大学のスティーブ・ハンケ教授も2022年11月26日付のツイッターで、前日時点でエルサルバドルは総額1億642万米ドル(約200億円)のビットコインを購入してきたのに対して、時価総額が3945万米ドルにとどまっており、6697万米ドルの評価損が発生していると指摘した。そのため、年末時点でエルサルバドルは7000万米ドル前後の評価損を抱えていたと考えていいだろう。