イギリスが直面する深刻なインフレ
2022年は歴史的なインフレの年だった。低成長・低インフレが定着している日本でも、消費者物価は11月に前年比3.8%上昇し、約32年ぶりの伸び率となった。
とはいえ一時期に比べると商品市況は安定しているし、また年明け以降は家計向けの電気料金の補助金が給付される。電気料金を2割程度引き下げる効果が期待される。またガソリン価格にも補助金が給付されるため、インフレは今後、落ち着いてくるだろう。
確かに諸外国と比べると、日本のインフレ加速は限定的だ。しかし日本の場合、潜在成長率が低いという問題がある。そのためインフレ率の水準が低いからといって、他国に比べるとインフレが経済に与える影響が軽微だとは必ずしもいえない。名目の所得が増えにくい分、インフレが軽微でも、実質の所得は目減りすることになる。
日本以外を見渡すと、インフレが最も深刻な地域は欧州だったといえよう。
最新11月の欧州連合(EU)の消費者物価は前年比11.1%上昇となった。またEUと袂を分かった英国の消費者物価も同10.7%上昇と、伸び率は依然として歴史的な高水準である。ロシアのウクライナ侵攻を受けて生じたエネルギー不足が、インフレ加速の主因となった。
英国の場合、消費者物価の先行指標となる生産者物価の前年比上昇率が夏にピークを付けた(図表1)。しかしその後の生産者物価の上昇率の低下ペースは鈍いため、消費者物価の上昇率の低下もまた鈍いものとなる。事実、イングランド銀行(中央銀行)も最新11月の見通しで、2023年末の消費者物価上昇率が5.2%になると予測している。
深刻なインフレを受けて、賃上げデモやストライキも生じている。郵便会社ロイヤルメールは、クリスマスの直前の12月23日から24日まで、ストライキを決行する予定だ。年末にかけて休暇に入るため、物流が急増するタイミングでロイヤルメールの職員のストライキを予定していることは、英国民のフラストレーションの強さをよく表している。