危機管理広報が抑えるべき4つの方針

炎上時における対応は、いわば「危機管理広報」である。普段の前向きな広報とは異なる面が多々あるうえ、人は短期的にメリットのありそうな選択をついしてしまうものだ。しかし、不用意な対応によって却って批判が高まり、そちらに対応のリソースを割かれてしまい、本来の問題解決に悪影響を及ぼしてしまってはどうしようもない。広報担当者が冷静に判断して経営者に具申できればよいのだが、なかなか難しいこともあろう。そんなときに立ち返って確認しておきたい、危機管理広報の対応指針を4つ挙げておこう。

1.「謝罪」から入る

きっかけや内容がいかにあなたや組織にとって不本意なものであっても、「炎上」状態にあるということは、「不快に感じた人が一定割合存在する」ことに他ならない。一刻も早く釈明や反論をしたいところであろうが、その前にまずは「世の中をお騒がせしたことについて謝罪」することが基本となる。

「謝罪だなんて! 自分たちは炎上による罵詈雑言の被害者なのに!!」と思われるお気持ちは重々分かるのだが、「謝罪すること」は「法的な責任を認めること」とイコールではないので、身構える必要はない。まずは炎上という事態に至ってしまったことについて、「不適切な点があったと重く捉えており、真摯に対応していく」との姿勢を示すことが重要である。そうすれば批判者側でも、「その後の釈明を聞こう」といったスタンスにもなるはずだ。

謝罪に頭を下げる日本のビジネスマン
写真=iStock.com/RichLegg
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2.すべての判断基準は「組織外」に置く

危機管理広報の落とし穴となるキーワードがある。それは「この業界では当たり前」だ。

組織内の不祥事やトラブル、失言が公になった際などに、トップや担当者が「業界の常識」を持ち込んで判断してしまったことで、対応に妥協や詰めの甘さが生じることはよくある。また関係者の「今まで誰も何も言わなかったのに、何を今さら文句を言われないといけないのか!?」といった本音は、決して口をついて出ることはないだろうが、雰囲気はそれとなく感じとれてしまうものだ。それでは事態が収束するどころか、炎上がさらに拡大してしまうことにもなりかねない。

「社内的には問題ない」「この業界ならどこでもやっている」「今までずっとこのやり方でやってきた」といった言い訳は通用しない。「業界の常識」とか「暗黙の了解」といったものから極力距離を置き、これまでの経緯などをまったく知らない一般の人がネガティブな情報を目にしたらどういった印象を持つか、イメージすることが重要だ。

炎上が進展してからでも、都度ネットを検索すれば「世間の声」はいくらでも拾うことができる。そこから、「世間はどんな点に注目しているのか」「何が問題視されているのか」といったポイントが分かるはずだ。その論点と向き合って対応していく必要がある。危機管理広報の判断基準を、社内や業界内に置いてはいけない。