結局その半壊アパートは、瓦礫が道路に散乱するまで崩落が進み、テレビ局が取り上げてようやく解体された。
築年数に見合わない管理状態にある空き家は、総じて所有者自身に解決能力が失われているケースが少なくない。放置が続く限り、同様の事態は今後も発生するであろう。
売りっぱなしのビジネスモデルは今も続いている
高度成長期からバブル期にかけて、地価の暴騰が続いていた。一般庶民が家を購入する場合、悪条件をも甘受しなくてはならなかった。
当時の状況を考えれば仕方ない話だが、注意しなければならないのは、更地の分譲地が投機の対象となった時代が終わった今も、需要に特化した場当たり的な宅地開発が続いていることだ。
地方の小都市で行われている宅地分譲の多くは、今も中小の分譲会社による小規模開発の繰り返しである。立地の選定こそ現代の需要に応えているとは言え、小規模ゆえに虫食い上の造成になりがちで、地元自治体も、そうした場当たり的な開発を抑制できるほどの開発計画や予算は持ち合わせていない。
公共交通網も衰退した今、現代の分譲住宅地は、かつての高度成長期の投機型分譲地と比較すれば、立地条件は格段に良くなっている。基本的には実需に対応した分譲地のため、敷地面積や接道においても、実際の宅地利用のうえでも申し分はない水準に仕上げられている。
その一方で、もともと水田地帯であったところに進出してきた大型ロードサイド店舗の近隣に開発されている宅地も多いため、ゲリラ豪雨や台風などの襲来時に、しばしばそのような低地の新興住宅地が冠水被害に見舞われる光景も目にするようになってきた。
時代は変わっても、住宅地としての持続性を考慮していない「売りっぱなし」のビジネスモデルは、今なお続けられているのが現実である。
今後さらに加速する人口減の中、次世代に継ぐどころか、世代交代のタイミングを見届けることも出来ないまま退場する物件は、今後も出てくるのではないか。人の住む住宅地に不吉な予言はしたくないが、今も開発が進められている宅地を見ていると、そう危惧せざるを得ない。