近年、古い郊外住宅地は高齢者の世帯が多く、健康面や体力の問題から満足に家屋周辺や庭周りの管理ができなくなっている場合もある。雑草が無造作に生い茂っていたり、玄関周りが散らかっているからと言って、それだけで空き家だと断定できない住居も多い。
実際に筆者も、以前あるYouTubeチャンネルの番組に解説者として出演し、その中で、成田市内の限界ニュータウンを訪れた。雑草が繁茂し、駐車場に朽ちた廃車が置かれたままになっている家屋の前で解説した。
筆者はその家を「空き家」と明言し、番組スタッフも空き家のひとつとして案内していた。しかし後に、その家屋の近隣住民の方より、その家は居住者がいるという指摘を受けた。映像は使われなかったので事なきを得たが、迂闊な決めつけは出来ないものだと肝を冷やしたものだ。
それ以降はトラブル防止のために、自身の記事や配信でも、家屋を外見だけから「空き家」と断定することは極力避けるようにしている。
築年数が浅すぎる限界分譲地の空き家
多くの地方部では人口減が続き、住宅需要の増大は見込めない。よって今後は家あまりの状態に陥るのはほぼ確実である。
千葉県北東部の限界ニュータウンや限界分譲地でも、空き家を見かける機会は頻繁にある。立地条件は地方の農村部とあまり変わらないので何ら不思議な話ではない。
しかし千葉の限界分譲地の空き家は、他の地方部ではあまり見られない大きな特色がある。そもそも開発の経緯から、こうした限界分譲地に建てられている家屋の大半はバブル期以降、つまり1980年代末以降に建築されたものが多い。
空き家になっている家屋もまた、同年代の建築物である。つまり他地域の空き家と比較して、放置されるには築年が浅すぎるのだ。一般的に、「空き家」と認識されている家屋の多くは、どんなに新しくても築40年はゆうに超えている老朽家屋ではないだろうか。
ところが、今回訪問・撮影を行った空き家については、すべて最新の登記情報を取得し内容を確認しているが、もっとも築年が浅いものは、八街市四木にある平成10年(1998年)築の家屋であった。
平成初期に建築された空き家は珍しくないものの、さすがに新しすぎる。これは果たして本当に空き家なのかと、自宅に戻った後も念入りに写真を精査したほどだ。
築後24年ということは、新築の住宅ローンの返済期間として一般的な30年(あるいは35年)も経過しないうちに、住居としての役目を終えたことになる。