テスラ株に人生の逆転をかけている?

特に、テスラ株の上昇は間違いないと先行きを強気に考える韓国の個人投資家は依然として多い。2021年11月末、連邦準備制度理事会(FRB)は“物価上昇は一時的”という認識の誤りを認めた。それ以降、米金利は上昇し、テスラの株は下落した。2022年12月下旬の株価はピークの半値以下だ。金利上昇以外にも、中国での販売減少懸念、イーロン・マスク氏がツイッターを買収しテスラの経営が不安定化するのではないかといった不安の高まりなどもテスラの株価を下押しした。

それでも、2022年12月時点で韓国個人投資家のテスラ株上昇期待は大きく低下していないようだ。サムスン電子の株式を売却する個人投資家は増えているようだが、テスラに関しては下落局面で買い向かう投資家が多いとみられる。

ある意味、韓国個人投資家の多くは、テスラ株に人生の逆転をかけているように見える。テスラを創業したイーロン・マスク氏は急速に米国や中国などでの事業運営体制を整備して電気自動車(EV)事業の成長を実現した。マスク氏は宇宙輸送サービスを行う“スペースX”も創業し新しい事業領域を開拓している。そうしたアニマルスピリットが自分たちの利得増加を支え、日々の暮らしぶりの改善をもたらすとの期待は強いのだろう。

家電、自動車、メモリ半導体で経済成長を支えてきたが…

このように考えると、人生の一発逆転を目指すためにハイリスクの短期売買を行うことは有効と考える韓国個人投資家の心理はかなり強そうだ。逆の見方をすると、個々人にとって、自力で所得の向上を目指すことは難しいまでに韓国の所得格差は拡大しているとみられる。いくつかの要因が考えられる中、2つのポイントが重要だ。

まず、韓国の輸出依存度の高まりは大きい。朝鮮戦争の休戦後から今日に至るまで、韓国は家電や自動車、汎用型の機械、造船、そしてメモリ半導体などの大量生産体制を迅速に確立し、低価格での輸出をおこない、経済成長を実現した。主導的な役割を果たしたのは、サムスン電子などの財閥系大手企業だ。