就労継続支援B型施設へ
2020年7月中旬、突然妻は、「障害者職業能力開発校に行こうかな、知り合いもできるし……」と言い出す。可能かどうか、河津さんは職業訓練校について調べた。すると、障害や体調に合わせて自分のペースで働くことができることがわかった。
まずは、就労継続支援B型施設への通所を提案。妻は8月から週1回通い、9月からは正式に週2回通所に。妻ひとりでは通えないため、現地までの付き添いとお迎えが河津さんの新たな役目となる。
11月になると、妻はオートロックの解錠の仕方やズボンのベルトの仕方がわからなくなるだけでなく、自分の名前と住所が書けなくなっていたことが発覚。
「就労継続支援B型施設のタイムカードが手書きだったのですが、前の月までは書けていました。河津の河は書けても、津はさんずいが抜け、下の名前も一文字抜けていました。そこで自宅で名前を書かせていたのですが、何度トライしても『津』が書けなかったのです。住所も同様で、細かいものは書けなくなっていました」
また、「舌を噛み切るのではないか」など、あり得ない不安でおびえることや、「痰が切れない」など、喉の異変を頻繁に訴えるように。
2021年に入ると、爪を切った後の引っかかりや、指先や唇のささくれ、イボ状のホクロなど、体のささいなことを気にするようになり、ささくれを引っ張ったり、かさぶたを剝がしたりするなど、患部を悪化させるようなことを繰り返すため、河津さんはますます困惑。
1月下旬には、買い物のために河津さんが15分くらい家を空けて戻ると、ベランダから通行人に向かって「助けてください!」と妻が叫んでいた。慌てて河津さんが戻ると、妻が普段ベランダに出る側の窓が閉じていたため、閉じ込められたと勘違いし、妻はパニックになったのだと判明。反対側の窓は全開だった。