「てりたま」「グラコロ」などの季節メニューで集客

東日本大震災が起こった11年以降、外食業界にふき始めた逆風の影響を受けたのはマクドナルドも同じだった。14年3月にサラ・カサノバ氏が社長兼CEO(最高経営責任者)に就いて改革に挑むも、同年7月にチキンナゲットを製造する中国工場で使用期限切れの鶏肉を使っている問題が報道され(後に日本には輸出されていなかったことが分かる)、翌15年に異物混入問題が起きて業績悪化に拍車がかかった。

組織改革のひずみも表れていた。08年に、それまで7割が直営だった店舗運営をフランチャイズ7割にする方針を決めたが、直営主体の中央集権的な仕組みは変えないままだった。現場から風通しの悪さについて不満の声が上がるようになっていた。また、既存店舗への投資も不十分で、店舗の清潔さに対する満足度が下がっていた。

カサノバ氏の下、日本マクドナルドは品質管理の徹底や店舗改装に取り組んだ。地力を回復させたことで18年に低迷を脱し、19年から店舗投資を本格化できた。

単一商材で勝負することが多いファストフードは、売りになる商品をタイムリーに投下して「飽き」を緩和し、客離れを防ぐことが重要だ。日本独自で開発した「てりやきマックバーガー」を1989年に期間限定商品から定番メニューに昇格させるなど、マクドナルドの商品開発力には定評がある。「てりたま」「グラコロ」など季節に応じたメニューも毎年のように集客に貢献している。商品開発力と、その魅力を消費者に売り込むマーケティング力が好業績の根本にある。

同社は22年9月に発行した書籍『日本マクドナルド「挑戦と変革」の経営』の中で、顧客の声に寄り添った戦略、店舗と人への投資、時代に合った組織と人材の配置という三つの施策のかけ算こそが成長を促す本質だと説いている。それを継続できるかどうかが今後の成長の鍵となる。