※本稿は、福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
太っている人は、実は栄養不足
一般的に、太っている人は「食べすぎ=栄養の摂りすぎ」だと思われているかもしれません。
驚かれるかもしれませんが、じつは多くの人は、「太っている=栄養不足」なのです。なぜかというと、太っている人の多くは、糖質に偏った食事をしているからです。
糖質を摂りすぎた場合、体を構成する脂質やタンパク質が足りなくなるため、体脂肪はあるのに脂肪以外の体の組織は飢餓状態になっていたりします。
飢餓状態のときに食べることを我慢できるでしょうか? 無理ですよね。私なら絶対にできません。
でも、栄養が十分に足りている状態なら、どうでしょうか? 多少の空腹感があっても、1日ぐらいは何とか我慢できると思います。実際、私は1日ぐらいの絶食は特に苦痛もなく実践することができます。それは痩せていても必須栄養素が十分足りているからです。
仮に太っている状態が栄養過多であれば、本来は1日ぐらい食べなくても苦痛ではないはずです。それができないということは、質的な栄養が足りていない可能性が高いのです。
つまり、「太っている=栄養過多」と考え、安易に食事の摂取カロリーを減らすというのは、ダイエットとしての戦略性は乏しいと言えます。むしろ、無駄な時間を消費するだけで、メリットは少ないでしょう。
テレビ番組などで、太ったタレントにダイエットと称して断食道場に行かせたり、野菜だけを食べさせるなどの企画がありますが、私からしたら飢餓状態の人に食べさせないのですから、単なる虐待にしか見えません。
「太る=カロリーの取りすぎ」は古い
厚生労働省が公表している日本人の食事摂取基準では、体重はエネルギー消費量よりエネルギー摂取量が上回った場合に増加すると記されています。つまり、食べたものが糖質であろうとタンパク質や脂質であろうと、総エネルギーが消費エネルギーを上回った場合に太るという単純なモデルで示しています。
確かに基本概念としては正しいのですが、この提示しているモデルでは、食事の内容によって消費エネルギーも異なるという生理学的な事実を無視しています。
同じ摂取カロリーでも炭水化物を多く摂る場合とタンパク質と脂質中心に食べた場合では、消費カロリーが大きく変わります。一般的には摂取した栄養素のうち、糖質では6%、脂質では4%、タンパク質で30%が体熱として変換されるとされます。
つまり、ご飯を食べるよりお肉を食べたほうがより多くのエネルギーが消費されるのです。
このため、摂取カロリーを考えるよりは、何を食べて何を食べないかを考えたほうが、痩せやすくなるのです。