中央銀行が信用を失えば、その発行する通貨も信用を失い、紙くずとなってしまうのです。債務超過は、民間で言えば倒産状態で信用失墜もいいところです。

確かに、中央銀行は自身で紙幣を刷れますから、資金繰り倒産はしませんが、その発行する紙幣は誰も信用してくれなくなるのです。私はそのような現状打破のため、いずれ日銀を廃せざるを得なくなると思っています。

ばらまいたお金を回収しないとインフレは収まらない

「アメリカのドル高は近隣窮乏化につながるから、アメリカは必ず金融引き締めをやめる」と主張する人もいます。しかし、これも幻想です。

日本経済新聞の記事によると、FRBのパウエル議長は2022年9月21日の会見で、アメリカの金融政策が世界に与えている影響をどう考えているのかとの質問に対し、「各国への影響は把握しているが、FRBにはアメリカ内のインフレを抑制し、雇用を守る使命がある」と強調したそうです。アメリカにとっても結局、自国が第一なのです。

「このまま金利を上げ続けるとアメリカの景気はさらに悪化する。だからいずれは金利上昇を止めざるを得なくなり、円安は止まる」と主張する人もいます。しかし、2022年10月時点でも、FRB幹部は続々と金融引き締めに対する発言を行っています。

ここには大きな誤解があります。FRBが利上げをしているのは、インフレ鎮静化に向け「景気を悪化させるため」なのです。景気が悪くなったからといって、慌てて緩和策に転じることなどあり得ません。緩和に再度転換などしたらすぐにでも、悪性インフレまっしぐらです。

財政ファイナンスでお金をばらまきすぎたのがインフレの原因ですから、金利引き上げだけでなく、ばらまきすぎたお金を回収(QT)し終わらなければ、インフレは収まらない。そのことをFRBはしっかり認識しています。

【図表】アメリカの消費者物価指数
出典=米国労働統計局、都市消費者の消費者物価指数:米国都市平均の全ての項目 [CPIAUCSL]、FRED、セントルイス連邦準備銀行から取得。2022年12月26日。

長期金利20%に達した「サタデーナイトスペシャル」再来か

では、これからどうなるのか。私が予想するのが、約四十数年前に行われた「サタデーナイトスペシャル」の再現です。

1971年のいわゆる「ニクソン・ショック」を受け、1972年、金本位制が崩壊し、管理通貨制度が始まりました。

管理通貨制度において一番の問題は、通貨の量をどのように制御するかです。金本位制度のもとでは、保有している金の量で発行される通貨量が決まるので、通貨の発行量には自然と制限がかかります。一方、管理通貨制度ではその制限がなくなります。

すると、政治家はどうしても、よりたくさんのお金を刷りたがることになります。それは当然の話で、国民の受けが悪い増税をするよりも、お金を刷ってしまったほうがよほど手っ取り早いからです。