コロナ禍でマスク生活が当たり前になったことで、口を開けて口だけで呼吸する「口呼吸」の人が増えているという。産業医の池井佑丞さんは「口呼吸だと顔の筋肉が衰えてたるみにつながりやすいほか、感染症にかかりやすくなったり、免疫異常や免疫低下を引き起こして潰瘍性大腸炎などにつながる可能性もある」という――。
マスクをつけようとする女性
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マスク生活で口呼吸が増えている

最近、口呼吸の人が増えていると言われています。その要因として、ここ数年ですっかりマスク生活が当たり前となったことが影響している可能性が指摘されています。

人の呼吸は鼻呼吸が基本です。通常は鼻から呼吸しますが、運動中など短時間に大量の酸素を必要とする場合には、鼻と口両方から酸素を取り入れるようになります。一方、常に口から息を吸ったり吐いたりすることを口呼吸と言います。

1日のほとんどをマスク着用で過ごすようになり、口元の緊張感が緩みがちになったり、人に表情を見られることが減って、以前に比べて表情筋を動かさなくなったりしている方が増えています。さらに、ご自身や周りの人の口もとが目に入ることもあまりないため、口呼吸を自覚したり、人から指摘されたりする機会も減っていると考えられます。

口呼吸になる原因としては、鼻詰まりで鼻呼吸がしづらいケースや、歯並びや骨格に問題があり口を閉じていられないケース、口周りの筋肉が衰えて口が開いてしまうケースなどが挙げられます。昨今のマスク生活により特に注意が必要なのは、口周りの筋肉の衰えのケースです。

口呼吸になりやすい状況についてもう少しご説明します。表情筋を動かさなくなっていると言いましたが、全身の筋肉同様、顔の筋肉も意識的に動かさないと衰えてしまいます。口周りの筋肉も例外ではありません。

対面のコミュニケーションが減ったことや、マスクで顔を隠していることの影響で、表情筋を動かす機会が減っていることに加え、ポカンと口を開けていても自覚しにくくなっています。また、マスクをしていると呼吸する時に気道の抵抗が増えるので、息苦しさを感じやすくなることも指摘されています。これらの要素が重なることで、口呼吸になりやすいと考えられています。

口呼吸では、口を閉じるのに使われる口輪筋をはじめとした口周りの表情筋が緩んだ状態になり、慢性化すれば表情筋の衰えは助長されます。こうして顔のたるみなどにつながる悪循環に陥りますが、口呼吸がもたらす影響は審美的観点だけにはとどまりません。口呼吸が、全身の健康を損なう可能性もあるのです。