1店舗目は順風満帆。ところが……

――その方は恩人ですね。話をした後、どのくらいで辞められましたか。

1年かかりました。

――それでも、そんなにかかった。僕もマーサーという外資系のコンサルティング会社の社長を辞任したんだけど、それを許してもらうのに8か月くらいかかった。ところで、辞める、と相談してから、独立ための準備はしていたのですか?

仕事しながら、物件探したり資金繰りしたりサロンのイメージを考えたち人に会ったりしていましたね。まずは表参道の骨董通りにあった物件の3・4階を借りてスタートしました。

――最初は空中店舗だったんですね。

はい。お金もないので2フロア合わせて30坪くらいでした。スタッフは5人。もともと知っていたスタッフ達です。

――スタートして、どうでしたか。空中店舗だと集客が大変じゃなかった?

美容師をすでに10年やっていたので、お客さんはついていたんです。これがいいのか悪いのか、最初は回ってしまった。また苦労をしないでなんとかなってしまって。

――また、なめてしまった(笑)。

そうなんです。なんとかできちゃうんだなって。1店舗目30坪の物件では、週末にはお客さんをお断りしているような状態にすぐなって、2年くらい前に店舗を移りました。

税理士さんや会計士さんに相談をすると、口を揃えて「やめろ」と言われた。“ホップとステップを抜かしてジャンプをしようとしている。これは小学生が大学受験をしているようなものだ”と。「とにかく早い」と言われた。

実際、本来探していた物件よりも面積が大きかったんです。それはわかっていました。前が30坪、次は50坪を探していた中、実際に借りたのは73坪。でもほかに空き物件がなかった。表参道目の前の一等地で、保証金も家賃もべらぼうに高い。さすがにどうしようかなぁと考えましたが、ここまで順調にきてしまっていたので、「なんとかなる」と思った。

けれど……、それが、なんとかならなかった。このときに初めてわかりました。