自分が好きなことを仕事というカタチにしているヒトたちを追う本連載。ITコンサルタントとして活躍するうちに、地域コミュニティ支援の醍醐味に気づいて独立した杉山隆志さんの後編です。
※前編(>>記事はこちら)
杉山隆志(すぎやま・たかし)●SIIIS社長
1966年、神奈川県生まれ。89年電気通信大学経営工学部卒、91年同大学院修士課程修了。同年アクセンチュア入社し、一貫して地方自治体のシステム構築のコンサルティングに従事する。その後、2001年デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)、06年フライトシステムコンサルティングを経て、11年SIIISを設立。同社代表取締役社長に就任。12年には「関心空間」事業の譲渡を受ける。そのほかにも、地域コミュニティのIT支援と教育を軸にしたNPO法人「AIP」の事業担当理事を兼任。佐賀県武雄市のFacebook化支援や市政アドバイザーに就任するなど、「地域から日本を変える!」をモットーに活動中。
柴田励司(しばた・れいじ)●インディゴ・ブルー代表取締役社長
1962年、東京都生まれ。85年上智大学文学部卒業後、京王プラザホテル入社。在蘭日本大使館、京王プラザホテル人事部を経て、世界最大の人事コンサルティング会社の日本法人である現マーサージャパン入社。2000年日本法人社長就任。その後、キャドセンター社長、デジタルハリウッド社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任して現職。
場所がないなら、つくってしまえ
――地方自治体の仕事を多く手がけた関係で、福岡の仕事をやるようになったということですが、杉山さんといえば、「大名なう」。これは福岡の町おこしのような意味合いがあるんですよね。
はい。小さなことでもいいから、自分たちは“これをやった”って言えるものができると、人は自信をもって、いろんなことを自分でできるようになるんじゃないかって思ったんです。そのきっかけをサポートできたら、と。
この「大名なう」ですが、報道などで知ると、ある日突然でてきたように感じるかもしれませんが、3年くらい前からお店の人や地元のITコミュニティと話し合いをしている土台があったんです。
「天神と大名をフリーwifi化しましょう」という話がこれより前にあって、fonと組んでやっていました。あれを仕掛けたのも僕たちなんですが、この取り組みや、ほかにもAIPというNPOでやっていたさまざまなコミュニティ支援が実になってきていた。そうなるとITコミュニティの人たちが、「福岡でも自分たちで何かできる」と思うようになってきて、これによってなにかやりたいっていう気持ちが高まってきていました。
そこまではいいんですが、この段階にくると今度は、「なになにがないから先に進まない」的な話が出てきたんですね。集まる場所がない!とか。
――「場所がないけんね」、みたいな(笑)。
そうそう。それなら集まる場所をつくってしまうことにしました。理由はいろいろあるでしょうが、その理由を全部解決して、「準備はすべて整いましたね。さ、はじめましょうか」と皆さまの退路を断ってしまおうという気持ちが、なかったとしたら嘘になるかもしれません(笑)。今でいうコワーキングスペースのはしりになるような仕組みをつくったんです。24時間、誰でも会議ができるようなスペースをタダで公開しました。そうすると自然発生的に、いろいろな方がここで打ち合わせをするようになるので、いろいろなものが生まれてきます。IT系のメンバーだけでなく、商店主の方、街で活躍されている方、などの交流が起こり、お互い協力してなにかできないかという話をしはじめてきたんです。