私の認識では、確かに物価の上昇はありますが、今まで投資をやっていなかった人たちが、ただちに投資を始めなければならないようなタイミングではありません。相場の雰囲気が変わった感じもありません。米国の過剰なインフレはすでにピークアウトしたようですし、日本の物価上昇もそう長くは続かないでしょう。23年の夏ごろには落ち着くだろうと思います。

30年近く何をやってもデフレを脱せなかった日本で、ほんの少しインフレに転じただけで騒ぎ立てるのは滑稽にすぎます。慌てて資産を投資に回さなければと考える必要はありません。「インフレが来たと思って急いで株を買ったら、2割も価格が下落」ということもありえるのが投資の世界。笑い話にもなりません。

危ないから投資はしないほうがいい、と言いたいのではありません。投資はやったほうがいい。日本人の保有資産における現金比率の異常な高さは、昔から言われ続けていることです。個人金融資産2000兆円のうち半分以上が現預金、確定拠出年金ですら3割以上が預貯金で積み立てられています。

人々が投資をやらない最大の理由は「わからない」「面倒くさい」からでしょう。どんな商品があるか、それぞれのメリット・デメリット、どんなタイミングで買えばいいのかなど、理解しないといけない。しかも、必ず儲かるわけではない。「それなら現金のまま置いておこう、儲かりはしないが損もしないのだから」といったところではないでしょうか。

日本にはいまだに「現金主義」が根強く残っている

毎月同じ日に、同じ額だけ買い続ける

しかし、なにごとも偏りすぎにはリスクがあります。これまでの30年は現金偏重でも困らなかったからといって、これからの30年も同じとは限りません。インフレかデフレかにかかわらず資産形成をするうえで、投資は避けて通れません。これを機に現金主義を卒業する人が増えるなら、この「インフレ騒動」も悪くはないのかもしれません。

どんな投資ができるかは、どれだけ投資に時間を割けるかによります。値動きがあるものですから、一か八かのギャンブルは避けたい。商品ごとの特徴・特性を知るのはもちろん、現在の市況でその資産が置かれている状況や、値動きのパターンなどを理解したうえで投資をする必要があります。しかし、多くの人には仕事があり、家族との時間があり、趣味や余暇に使いたい時間もある。現実的に投資に割ける時間は多くないのが実情でしょう。