そこで有効なのが分散投資です。1つの資産だけに投資しない、まとめて1度に投資しない。私の周囲を見ても投資で痛い目に遭っているのは、ほとんどがこの鉄則を踏み外した人です。

毎月の同じ日に、同じ額だけ、同じ投資商品を淡々と買い続ける手法は「ドルコスト平均法」と呼ばれています。投資金額が一定なので、市況の高いときは少なめに、安いときは多めに商品を買うことになり、投資期間全体での平均購入価格を抑えられます。日々の値動きを気にする必要はありません。

タイミングを気にする必要がなくなれば、あとは投資商品の選定にリソースを注げます。これさえ間違えなければ資産額は着々と積み上がり、長期的に少しずつでもインフレが続くなら価値の目減りに耐えられます。

ただし、投資商品によっては資産の裏付けがないために長期保有に適さなかったり、コストばかりがかかって逆に減り続けてしまうものもあるので注意が必要です。いずれにせよ、どんな選択肢があるかを知るのが第一歩です。

環境の変化に適応できる資産を選ぶ

まずは「株」。投資と聞いて真っ先に思い浮かぶ資産でしょう。個人的には、インフレを想定して投資をするなら株が最も優れていると思っています。なぜなら、株は経営者という人間によって利益が生み出される仕組みを備えた“意思がある資産”だからです。経営者はインフレになればインフレに対応し、円高になれば円高でも稼げるよう、知恵を絞り、投資家の代わりに利益を生み出す手を打ってくれます。

ただ、人が経営するがゆえに失敗することもありえます。経営者の能力が足りなければ事業環境の変化に適応できず、淘汰されてしまう可能性もあります。リスクを下げるためには、1人や数人の限られた経営者に自身の資産を託すべきではありません。投資銘柄の分散が不可欠です。大勢の経営者に投資すれば、収益を上げられない経営者が交ざっていても、才覚ある他の人物の努力によって相殺されます。

株は売買の最低株数が決められており、多くの場合は100株単位でなければ取引ができません。毎月の収入から捻出できる予算で多くの銘柄を分散して買い続けるのは、よほどの資金力がなければ無理です。そこで「投資信託」が選択肢に上ります。株価指数に連動する「インデックス・ファンド」であれば数百銘柄に分散でき、買い付け額も一定額に設定できます。数百円からの投資も可能です。

証券会社や銀行ではこうした積み立て投資に対応したサービスがありますので、最初に設定してしまえばあとは自動で銀行口座から振り替えが行われ、投資される仕組みをつくれます。また「つみたてNISA」を活用すれば、最長20年間、分配金と譲渡益にかかる税が非課税になる優遇措置も享受できます。