年次が上の人には気軽に本音を見せることはできない

私が問い掛けた18歳の女性社員は、「仕事の内容はいいんですけど、お金が……」と答えました。私は、その社員が「お金」という率直な言葉を使ったことに驚きましたが、それは半分は本音で、半分は30代の女性社員との関係を話題から逸らすために述べたことに聞こえました。

赤いハートは鎖でロックされています
写真=iStock.com/Route55
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本人によれば、同じ高校を卒業して新聞社に勤めた同級生は、とても給料がよいらしく、自分の給料はそうでないのが現在の仕事で不満な点とのことでした。

私たちが勤務していたのはメーカーの海外事業部でしたので、海外滞在経験のある人が多かったですし、語学も堪能な人たちが多かったからでしょうか。

「自分も留学したい。しかしアメリカやイギリスは費用が高くつくので、オーストラリアかニュージーランドを考えている」という話を聞きました。

思った通りでしたが、やはりもう辞めることを考え、その時期についても検討しているのでした。

私は話を聞きながら、本当は、同期入社の他の女性社員たちは定時に退社していることや、のんびり仕事をしている人も多いことを気にしていても、それは話せないのだろうと感じたものです。

習慣的な残業を部下や後輩に強いる人

私には、なぜこんな状態を(新入社員の所属する課の)管理者が放っておくのか疑問でした。

習慣的な残業(このケースではサービス残業)は、それを部下や後輩に強いることができる人たちがいるために生じます。

私は、その新入社員の課の管理者に「毎日残業になっているのを放っておいていいのですか」と尋ねましたが、その管理者は「残業といっても、(1日あたり)2時間程度のことだろう」と答えました。

確かに、この管理者も30代の女性社員も、昔から無償の残業をしてきた人たちでしたが、私としては、彼らが同じことを若い人たちにさせるのを厭わないのに驚きました。

また、「残業といっても、2時間程度のことだろう」というのは、この管理者が考えていることのすべてではなく、本当は、聞き分けがないであろう30代の女性社員と話し合ったりするのが嫌で、新入社員の残業は目をつむれる程度の話だとかわして、見て見ぬふりをしているのです。