健康長寿にはなにを食べるべきか。リハビリテーション科指導医・専門医の吉村芳弘さんは「意識してたんぱく質を摂取したほうがいい。50代までは『太らない=健康』でいいが、65歳以上はやせているほうが健康リスクが高まる。だから私は朝からステーキを食べることを勧めている」という――。(第3回)
※本稿は、吉村芳弘『「80歳の壁」を超える食事術』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
年を取ったら塩分とカロリーは気にしなくていい
筋肉不足でサルコペニアやフレイルになるのがいかに危険で命の問題に直結するか、ここまででおわかりいただけたでしょうか。メタボ予防の「過栄養対策」からフレイル予防の「低栄養対策」へのギアチェンジを図で表したものをご覧ください(図表1)。
いままで食事のときに「カロリーオーバーにならないように」「塩分は控えめに」と、あれこれがまんしてきたと思います。65歳をすぎたら、健康を維持するのにがまんすることはありません。なんでも好きなものをしっかり食べてください。
大事なのは、体重と筋肉の維持、または増加です。50代までは、「太らない=健康」という考え方でかまいません。でも、65歳以上は真逆です。やせていることは健康リスクそのものです。やせているとちょっとしたけがや病気が原因でフレイルやサルコペニアにおちいりやすく、いったんフレイルサイクルにはまると悪循環から抜け出せません。認知症や寝たきりになるリスクも一気に高まります。とり返しがつかない状況になる前に、食生活を根本的に見直す必要があるのです。
まず、体重を増やすためにカロリーをしっかりとる。スナックでも揚げ物でもいいのです。あっさりよりもこってり、食べたもの勝ちだと思ってください。そして筋肉をつけるためにたんぱく質の摂取量を増やします。野菜より肉や魚ファースト。朝からステーキ大歓迎です。
肥満や血糖値を気にして糖質制限してきた人は、まず制限を解除します。高齢者の糖質は高めでいいというデータもあります。もう厳格な血糖管理は不要な時期なのではないか、と自分の健康状態をふり返ることが大事です。