中にはビルトインガレージを設けている宅地もある。乗用車と言えばセダン型が当たり前だった時代に造られたビルトインガレージは、今日の基準では総じて天井が低く、中にはまともに駐車できる車種がほとんどないものもある。
駐車場の拡張や造り直しを行うにしても、すでにそこに住居を構えて住んでいるのならともかく、新築用地として選ぶメリットがほとんどないのは、先に述べた建築基準法に適合していない擁壁の土地と同様である。
たとえ駐車スペースが不足していようとも、宅地需要・土地需要の高いエリアであれば、月極駐車場はたやすく見つかると思う。しかし、千葉の限界分譲地ではそうもいかない。有料の駐車場の需要がほとんどなく、幸運に借り手が付いたとしても、せいぜい1台あたり月に2000円から3000円程度の賃料しか得られないような市場では、月極駐車場の経営に着手する事業者はない。
駐車スペースを確保したければ、車両が乗り入れ可能な別の空き地を探さなくてはならず、これでは本末転倒も甚だしい。
崩壊した擁壁、歪んだ擁壁、地盤沈下…
そもそも建築基準法による規制を受けないということは、裏を返せば、安全のための統一された基準や、質の低い工事を排除できる審査や仕組みが存在しないということである。
どれだけ費用を投じて豪壮な家を建てたとしても、その家が立つ宅地の擁壁工事がずさんなものあれば何にもならない。
これまで筆者が訪問した分譲地の中には、よほど質の低い工事が行われたのか、擁壁そのものが崩壊して宅地が激しく沈下していたり、雨水が染み込んで膨張した土砂によって擁壁が歪み、今にも崩れ落ちそうな擁壁を見かけることもあった。
また、分譲販売時に見た目ばかり重視して、擁壁付近に苗木を植えてしまったために、数十年の年月を経た今、その苗木が大木となって、擁壁が木の根に押されて崩落し始めているものもある。