近年、日本が貧しくなったせいか、高齢化が進んだせいか、尊厳死と組み合わせて「高齢者に無駄な医療費をかけるな」という乱暴な主張がされがちだ。内科医の名取宏さんは「医療費の増大は、高齢化よりも医療の進歩のため。世代間対立を生むような偏った主張には耳を貸さないほうがいい」という――。
病院のベッドで寝ている患者と、話をしている看護師
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極論に惑わされず正確な情報収集を

少し前、「『寝たきり老人の胃ろうに保険適用しません。飯が食えない老人は自費で生き残るか諦めてください』と言える政治家が必要になります」というツイートが話題になりました。

「胃ろう栄養」とは、口から十分な食事ができなくなった患者さんに対して、手術で腹部に小さな穴を開けてチューブを通し、胃に栄養剤を入れる方法です。他に鼻からチューブを挿入して胃や腸まで通し、栄養剤を注入する「経鼻栄養」があります。経鼻栄養のほうが手術は不要ですぐに行うことができるという利点があります。一方、胃ろう栄養のほうは口からの食事をしてみることもでき、鼻の違和感やチューブ交換のリスクを減らすことができるという利点があります。胃ろう栄養や経鼻栄養などを「経管栄養」と言います。