なぜ英首相の交代が続いているのか
イギリスの政治が落ち着かない。2022年10月20日、ボリス・ジョンソン元首相の後を受けて就任したリズ・トラス首相が辞任を表明した。トラス前首相は首相就任時、第二のマーガレット・サッチャーとして期待された。しかし、“鉄の女”サッチャー元首相の在任期間が、20世紀以降最長の11年208日だったのに対して、トラス前首相の在任期間は50日。史上最短命で終わった。
トラス前首相の辞任表明を受け、与党である保守党は急遽、党首選を実施した。再登板が噂されたジョンソン元首相は出馬せず、リシ・スナク元財務相が無投票で党首に。国王になって間もないチャールズ3世の任命を経て、戦後最年少の42歳という若さで首相に就任した。この6年で5人目の首相になる。
トラス前首相失脚の原因は経済政策だ。トラス前首相がなぞらえられたサッチャー元首相は、経済を長年研究していた筋金入りの自由経済主義者だった。国有企業の民営化や規制撤廃を推し進め、インフレに苦しむ瀕死のイギリス経済を立て直した。確かに失業の山となり、石もて追われるがごとく退任したが、その成果は約10年を経て、トニー・ブレア政権時に開花した。