どこかで抜かないと自分が壊れてしまう
もちろん、介護を巡る小さな“ヒビ”は知らないうちに堆積する。「リンゴ食べる」と言うから皮をむいて持って行くと、「こんなん、今、いらん」と突き返された時。「あんたが食べたいだけちゃうか?」と、自分のせいにされた時。
認知症ゆえと思えども、決めつけの強い語気が胸に突き刺さる。それはどこかで抜かないと、きっと自分が壊れてしまう。
だから、取材に応じたと北沢さん。
「誰か、話を聞いてくれる方に会いたかったんだと思います。悔いがないようにしたいだけで、ここまで来ちゃったんですよね」
八方塞がりだと北沢さんは状況を冷静に語ったが、実はこれから迎える60代、70代に、大きな目標を持っていた。
(後編に続く)