小学校時に地味な存在だった児童がキラキラ輝く学校
「そんなにレベルの低い学校には通わせたくない」
ひょっとするとそう思われるかもしれません。ここであえて極端な例を挙げてみます。
たとえば、近年の中学入試は激戦が繰り広げられているものの、女子校を中心に「定員割れ」状態のところもいくつかあります。
「定員割れの学校に進学する意味があるのか?」と考える保護者も大勢いらっしゃるでしょう。でも、「入試レベル」以外の側面、たとえば、教育方針や校風、行事などに着目すると、わが子にとって「かけがえのない学校」になる可能性だってあるのです。
前著『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)でも紹介しましたが、定員割れを引き起こしていたある私立女子中高一貫校の理事の方からこんな話を聞いたことがあります。
「小学校の卒業アルバムを見て、『あれ? こんな子、同じクラスにいた?』などと言われる物静かで目立たない子がいるでしょう。わが校はそんな子ばかりが集まるのです」
その理事の方はこう続けました。
「だから、わが校では『いるかいないか分からなかった』そんな子たち一人ひとりに対して、中高6年間の中で一度はスポットライトを浴びる機会を作ることを心がけています」
「誰だって自分に注目してもらうのは嬉しい。そういう成功体験を味わわせてやりたいのです」
実際、この学校に通っている子の保護者から次のようなことばを頂戴したことがあります。
「まさかあんなに目立たなかった子が学園祭の舞台に立って笑顔を見せるなんて、以前はまったく想像できませんでした。あの学校に引き合わせてくださったことを本当に感謝しています」
偏差値はあくまでも一つの尺度に過ぎないのです。
ただし、「定員割れ」の度合いが酷く、1学年に数人しかいないような学校もわずかながら存在します(このタイプの学校は高校からの入学者を確保して持ちこたえているのです)。そうすると、部活動だって満足にできませんし、極めて限られた人間関係の中で過ごすことになってしまいます。こういう学校は避けるのが無難です。
お子さんは長い間、中学受験勉強を続けてきたはずです。たとえ1校でも合格切符を手にしてもらいたいとわたしは考えます。結果として、その学校に進まず、公立中学校に進学するのも一向に構いません。
でも、「公立中学校しか行くところがなかった」のと「公立中学校を選んだ」のとでは、お子さんの中学生活のスタートを切る際の気持ちがずいぶん違ってくるのではないでしょうか。