日本は世界有数の長寿国である。だが、それは幸せにつながっているとは限らない。臨床内科認定医の杉浦敏之さんは「高齢者の患者には『もう生きていたくない』『死んでしまいたい』と話す人が少なくない。『長寿は美徳』という考え方はもう通用しない」という――。(第1回)

※本稿は、杉浦敏之『死ねない老人』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

テーブルに伏せる高齢の女性
写真=iStock.com/ururu
※写真はイメージです

100歳以上の高齢者は9万人いる

日本は世界に冠たる長寿国です。2022年版として発表されたWHO(世界保健機関)の世界保健統計によると、WHOに加盟する194の国と地域のうち、世界一の長寿国は84.3歳の日本です。この調査が始まって以来、日本は国別の平均寿命で20年以上にわたり、ずっと上位に入り続けています。