部下が意見を出してくれないときはどうしたらいいだろうか。プロコーチの原田将嗣さんは「意見を求めた部下から『特にありません』と返ってきても大丈夫。さらに掘り下げる質問を投げかけましょう」という――。

※本稿は、原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

オフィスで働くビジネスパーソン
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「意味がわからない」ときにかける言葉

×「意味わからないんだけど」
○「理解したいから聞くんだけど、もうちょっと教えてくれないかな?」

誰もが意見を言い合える心理的安全性の高いチームでは、時に意見の衝突が起こります。

議論が白熱すると「意味がわからない」とか「君はわかってないな……」などと言いたくなることもあるでしょう。

しかし、このような発言は会議を険悪な雰囲気にし、「話しやすさ」の因子を下げてしまうだけ。そこから議論が発展したり、いいアイデアを思いつく未来はあまり見えてこないですよね。

「意味がわからない」と単に否定するスタンスではなく、相手の意見の背景まで、踏み込んで聞くことが、価値あるゴールに向かって健全に意見を衝突させるために有効でしょう。

そこで使っていきたい「おかえし言葉」が「理解したいから聞くんだけど、もうちょっと教えてくれないかな?」です。

ポイントは「理解したい」と伝え、相手が自分なりの意見を言いやすくすることです。

同じ機能を持った言葉には他にも、

「お客さまだと思って説明してもらえますか?」
「その分野の素人だと思って説明してみてもらえますか?」

などがあります。

はじめは「まとはずれ」とか「突飛な意見だな」と思えるものでも、その意見が出てきている背景や着眼点、思考のプロセスなどが共有されることで、その背景を踏まえたアイデアが出てくることもあるでしょう。

人はなぜ意見の対立を怖がってしまうのか

心理的安全性がない状態では、なぜ意見の衝突を怖く感じてしまうのでしょうか。

それは「意見の対立」がそのまま「人間関係の対立」となってしまうから。たとえ業務上の意見が食い違っただけでも、当事者間ではつい「コトよりヒト」に目が向いてしまい、人間関係にまで影響してしまう傾向があるのです。

その結果、「○○さんにひどい指摘をされた」「○○さんと私はソリが合わない」「○○さんは、きっと私のことを嫌っていると思う」といった考えや感情が湧き、人間関係が修復不可能に……。

そんな事例は枚挙にいとまがありません。あなたももしかすると、そんなケースを見聞きしたり、当事者になってしまったことがあるのではないでしょうか?

そうした諍いは、もちろん組織やチームにとって、望ましいものではありません。しかし、人間関係の対立を過度に恐れ、意見の衝突を避け続けることも、仕事を進めるうえでは問題です。

例えば上司の方針の致命的な問題に気づいていても「いいと思います……」と答えるといったように、「問題に気づいている人がいるのに、言えなくなる」ことは、時に大きなトラブルや不祥事につながるような重要課題。

ですから、「トラブル防止や業績向上のため、意見を自由に衝突させることができる」けれども、それが「人間関係の対立に発展するわけではない」という、心理的安全性が担保されシナジーを生むような衝突、いわば「健全な意見の衝突(ヘルシーコンフリクト)」が重要なのです。