令和の中高一貫校は「開放的」になっている

冒頭で触れたように、部活の顧問問題は放置すれば、今後、事態は悪化する恐れがある。生徒の学園生活を充実させ、教員の労働環境もよくする妙案はないか。

わたしからひとつ提案したい。アイデアのヒントは、昨今、急速に増えている「他校との協働イベント」の開催だ。前出の三輪田学園は、2020年に制服を改定したときに、ジェンダーレス、多様性の観点から、スラックスを導入した。このことに関心を抱いた本郷(前出)と成蹊(東京都武蔵野市/共学校)の生徒たちが集い、ジェンダーについてのオンライン会議をおこなったそうだ。その場には、上野千鶴子(東京大学名誉教授)も招待し、白熱した議論になったそうだ。

また、同校の合唱部は、開成(東京都荒川区/男子校)と混声合唱をおこなったり、図書委員会は早稲田(東京都新宿区/男子校)とビブリオバトル(京都大学から広まった輪読会・読書会で「書評合戦」をゲーム形式でおこなうもの)を楽しんだりしているという。

他校も負けていない。田園調布学園(東京都世田谷区/女子校)は、逗子開成(神奈川県逗子市/男子校)や品川女子学院(東京都品川区/女子校)と協働して創造力を競い合うコンテストに出場したり、今年の文化祭は生徒会主導のもと、浅野(神奈川県横浜市/男子校)とコラボレーションしたりしたという。

令和の中高一貫校のキーワードは「他校との協働」

すべての部活にこうしたスタイルが適用できないかもしれないが、このような中高一貫校同士の「協働」をヒントに解決できるのではないだろうか。つまり、1校の教員が複数の学校の「同種の部活動」の顧問になればよい。

たとえば、近隣にある複数の学校の「生物部」の生徒たちが一堂に会して、その場所を提供する学校の教員が顧問として全員を受け持つという方法を講じるとよいのではないか。

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高校野球における「合同チーム」と似ているかもしれない。野球部の部員数が9人に満たない学校同士が手を組み、1つのチームとして予選大会に出場することがある。その手法をいろいろな部活動に取り入れればよい。

在校生たちにとっても、他校の生徒たちと触れ合う時間が定期的に訪れるので、その分、人間関係の輪が広がり、互いに良い刺激がある。令和の中高一貫校の生活の新たなスタイルとして、他校との「つながり」というのがこれからのキーワードになっていくのかもしれない。

なお、令和の私立中高一貫校それぞれの独自の取り組みを拙著『令和の中学受験2 志望校選びの参考書』(講談社+α新書)に盛り込んだ。興味のある方はぜひ手に取ってみてほしい。

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