部活動顧問の外注に反対する声

部活動の“外注”とは、それまで教員が顧問を務めていたところを、外部の専門スタッフ・業者に任せるようにするということだ。

保護者の中には「その道の専門家に指導してもらったほうが、わが子は熟達するのではないか」と期待する層もいる。実際、特定の強豪の部活動ではとっくに外注化を図っていて、大会などで結果を出しているところもある。わが子の部活動での活躍に期待を寄せる保護者にとっては、外注学校にこそ、わが子を進学させたいという傾向があるのかもしれない。

しかしながら、部活動は学校教育の一部であるという考え方も根強くあり、いわば「部外者」である外部スタッフに委託することにためらいを感じる学校もあるようだ。

本郷(東京都豊島区/男子校)で入試広報部長を務める野村竜太さんもそう考えるひとりだ。同校の教育方針のひとつは「文武両道」であり、部活動を学校教育の一環ととらえている。

「生徒には、勉強以外で何か熱中できるものを本郷で探そう、という話をしています。それが部活動であったり、生徒会活動であったりするわけです。勉強面と部活動ってつくづく繋がっているなぁと実感させられることがよくあります。ある生徒が部活動を楽しめるようになって生き生きとしてきたら、学業の面でも一気に成長する。そんなケースをこれまで何度も目にしてきました。何かに対して手応えを得る、自信が持てるって大切なことなのでしょう」

制服を着た日本の10代の生徒が学校に戻る
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このような観察眼は学校の教員が部活動の顧問を兼任するからこそ培われるのだろう。部活に没頭すると、定期テストの点数もよくなる。そんな因果関係を発見・目撃する教員は数多い。だから、外注することで部活での生徒の様子をウオッチできなくなるのは教員として残念でならないのだ。

また、各校の取材を通じて知ったのは、勤務時間は関係なく、部活動の指導に心血を注ぐことを生きがいにしているような教員も大勢いるということだ。

駒場東邦(東京都世田谷区/男子校)の中学教頭・田子久弥さんはこう話す。

「昨今の部活動問題では、泊まりがけの行事に顧問が参加しなければならず、その影響で顧問の数が少なくなっているという面はあります。そのため最近は、指導者の外部委託も考えたほうが良いのではないかという声が上がっているのも事実です。しかし、部活動も学校活動の一部ですからね。外部委託に対して反対する教員もいます」

もちろん、学校生活の中心を部活動に置かない子どもたちも大勢いるが、日々の学校生活の一部として部活動に励みたいと望んでいる子どもたちにとっては、学校教員に見守られるという安心・安全な環境がベターかもしれない。