女性は一度地方を去ると戻ってこない
20代前半の男女は、進学や就職のために地方から転出することが多い。その一方で、男性は20代後半で一定数が出身地に戻るが、女性の場合には転出が引き続き多い。そのことはデータがはっきり示している。
図表1は、2020年(令和2年)10月1日の国勢調査で、都道府県別、男女別に20~24歳(20代前半)と25~29歳(20代後半)の「他県からの転入と他県への転出」の数字をまとめたものである。
どの都道府県においても、進学・就職のために20代前半の移動人口が多い。また20代後半の移動人口が次に多いが、それは主に就職のために移動していると推測される。このデータでは、20歳~24歳と25歳~29歳の男女別の転出・転入とその差分(ネットの転入・転出数)と、さらに男女を合わせた差分(ネットの転入・転出数)を計算した。
以上のデータから、都道府県別の転入・転出の状況をまとめると、図表2のようになる。
20代の転入超過は東京都が圧倒的に多く、続いて神奈川県や千葉県、埼玉県の首都圏、加えて愛知県や大阪府である。男性に限って言えば、静岡、滋賀、広島も転入超過になる。
一方、転出超過県のうち、20代前半後半で男女ともに転出超過になったのは21道県である。「20代後半で男女ともに転入超過」となる県は6県あり、「20代後半で男性のみ転入超過」となるのは9県。「20代前半で男女の少なくともどちらかが転入超過」となるのは京都府、福岡県、宮城県、石川県、滋賀県で、主に進学によるものと推測される。
女性にとって魅力的な仕事が地方にはない
これらのデータから、「地方の20代男女が、首都圏や愛知県、大阪府に転入する」とともに、「男性に比べて、女性が地方に戻らない」ことは明らかである。
「地方では、やりたい仕事がない」という声を聞くことがあるが、それは男性でも同じであろう。つまり男女で転入・転出に差があることの根底には、地方での採用状況や職場において男性が有利であり、男女差別があると推測される。換言すると、女性がUターンしたいと思っても、地方にある魅力的な仕事は男性が優先的に採用されるため、女性は都市で働くことを選択するのである。
地方の人口を増やすためには、若い女性のUターンを推進することが必要であるが、そのためには地方での就職活動で男性優先にしないことや、地方の職場で男女平等にすることが重要となる。また地方で子育て中の家庭では、「子供たちを平等に育て、男女ともに『地元に戻りたい』という土壌を培うこと」をぜひ実践していただきたい。その効果が出るのは次の世代、数十年先のこととなるとしても。