北海道ならではの充実した教育環境
東川町を訪れる人が驚くのは、広大な敷地にある東川小学校と東川町地域交流センターだろう。その広大な敷地は約4ヘクタールもあり、さらに東川小学校の周りは12ヘクタールの公園となっている。そこには人工芝のサッカー場、天然芝の軟式野球場、多目的芝生広場、1ヘクタールの体験水田・体験農園・果樹園等があり、様々な課外活動ができるようになっている。
東川小学校の校舎は平屋建てで、広々とした廊下と区切りがない教室が18ある。子供を持つ親ならば、「こんな環境が整った小学校で子供を学ばせたい」と思うのも当然だ。実際にこの設備が整った東川小学校の存在は、子育て世代の移住者を惹きつけることにつながっているという。
東川小学校と地域交流センターは2014年に新築移転されたが、小学校の建設費は約38億円、周辺の整備費をあわせると約52億円という大規模なプロジェクトだった。前述のように、東川町内の1学年の人数は80人程度であるから、人口や財政規模からすれば信じられないような規模である。
また東川町には東川小以外にも、東川第一小学校、東川第二小学校、東川第三小学校と、東川中学校がある。これだけ設備が整った東川小学校を新築するにあたり、他の自治体だったら小学校の統合や小中一貫校を新設するだろう。
その点について松岡町長に質問すると、「東川町にある4つの小学校はそれぞれ明治31年から33年に創立され、120年以上の歴史があります。新しく東川小学校ができても、『地域の小学校に通わせたい』と希望するご家庭があります。小学校は地域の中核なので、それぞれ残すべきだと考えています」との答えだった。小中一貫校にしなかった理由もそこにあり、小学校が4校あるため、東川小学校だけが東川中学校と一貫教育をするというのは望ましくないからだ。
日本初の町立の日本語学校を開設
さらに2015年には、日本初の町立の日本語学校が東川町にできた。日本語学校は東京や大阪など都市部にあることが多いが、「都会ではなく、地方で日本語を学びたい」という学生たちが韓国、台湾、中国、タイなどから留学してくる。留学ビザのいらない短期コースの留学生は累計3000名を超え、留学ビザが必要となる6カ月もしくは1年間の長期コースの留学生は、累計400名を超えている。
そして東川町内には日本語学校の留学生用の学生寮も完備している。東川町立の日本語学校の存在によって、町の消費が伸び、また学費や寮費の納入金は町の収入となる。長期的には交流人口を生み出し、東川町のファンを国外にも作ることにつながるだろう。
前述したように、留学生は一定数が毎年出入りするため、東川町の人口増には直接つながらないが、町の活性化には貢献しているのだ。人口8000人規模の町がこれだけの外国人留学生を町内に受け入れているのは、オープンな東川町ならではのことだと思う。