「お笑い界に認めてもらうための王道を走ってないんです」

2度目のインタビューは、それから2年後。2016年、彼女のワールドツアーのニューヨーク公演の時だった。前回のインタビュー記事に直美さんがお世辞にも「大声をあげて笑った」とお礼を言ってくれたこともあり、事前取材のOKをもらえた媒体は弊社だけだった。ステージ直前の楽屋で話を聞く。

「もちろん、世界にアピールしたい! って気持ちもあるけれど、でも、それ以上に日本にアピールしたい気持ちの方が強いんです。今回の(ツアーの)経験で、もっとデカくなって日本に帰りたい」

この時点でもまだ、彼女の目的は「世界進出」というよりあくまで日本でのキャリアアップだった。ただ、日本の芸能界ではすでに確固たるポジションを築いていたはず。当時すでに彼女はスターだったのだから。

「いやぁ、まだまだ。(日本のお笑い界に)認めてもらうための“王道”を走ってないんですよ、アタシ。誰が決めたのか、芸人にとってこれが“王道だ”って言われる道があって、(そこを走っていないと)日本だと芸人じゃないって言われるんですよ。“これは芸人(のすること)じゃないよね”とか。“芸人のくせに”って言葉も、よく言われますね」

「芸人のくせに」ではなく「芸人だからこそ」の道を探す

たしかに日本のお笑い界には既定路線のようなものが存在する。まずはバラエティ番組でMCからの「フリ」をうまく返す「ひな壇」を通過。後に冠番組を持って、深夜枠からゴールデン枠に「出世」していく。「芸人はかくあるべき」「お笑いはこうあるべき」、そういった声に翻弄され、自問自答した日々もあったという。

「でも、アタシは、なんで? って思っちゃうんですよ。漫才とコントとひな壇だけが芸人なのかなって。そこから広げてもっと幅広い場所で“芸人として”仕事ができるんじゃないかなって。今日(のステージ)も、ワールドツアー(自体)も、アタシとしては“芸人としてのひとつのパフォーマンス”なんです。

『え? 芸人のくせになんでワールドツアーなの?』って言う人もいるけど、逆に芸人には『こういう道もあるんだよ』って示したい。体を使ったこういうひとつのジャンルを作りたいなって気持ちはすごくありますね」

“芸人のくせに”じゃなくて“芸人だからこそ”、新しいお笑いもできるんじゃないか。取材のたびいつも笑わせてくれる彼女が、真剣な目で訴えるように話してくれた。