嫌なことのあとに2倍よいことがある
永守さんは、入社半年の新入社員にピンチをチャンスに変えることの重要性を説いた。
「一番大事なことは『会社は一人でやっているのではない』ということ。何百人とか何千人とか何万人のチームプレー。グループ全体でいけば15万人の全社員が危機感を共有することが大切です。
タイの洪水で、ほかの会社は生産が再開できずお手上げだった。しかし日本電産グループは違った。クレーンをはじめ、必要な機械全部を取り出して、ほかの国に持っていく。他社よりとにかく早く生産を再開させる手を考える。だからお客さんが8割のシェアをくれる」
11年は震災に始まり、円高、タイの洪水など厳しい1年になった。しかし永守さんはその都度、「困難をチャンスに。困難は必ず解決策をつれてくる」とメッセージを発信してきた。
「グローバルで仕事をすると、リスクもどんどん大きくなる。洪水のようにリスクがやってくる。リスクがやってくるたびに会社はチャンスをつかんでいる。困難はしんどいけど、嫌なことがあったら2倍いいことが返ってくる」
どんどん声の大きくなる永守さん。声を枯らして日本電産の「熱血DNA」を、新入社員に叩き込む。
「営業して断られると、この客ダメだな。次からは行かないでおこうと思う。でもそこでもう一回だけ行く。機械ならもう一回試作してみよう。もう一回計算してみよう。あともう一回。競争相手やライバルが諦め投げて逃げたらもう一回だけ行く。成功の道とは、この一歩のことなんだ。『ネアカ・イキイキ・ヘコタレズ』。この言葉、覚えとくように」
「永守重信」とはこういう人間だ!と断定できるような了見を私は持ち合わせていない。しかし、失礼を承知で申し上げるならば、私はこれほど純粋で明るい人を見たことがない。自分がやりたいことをやりたいようにするには、人と同じような努力ではダメなのだ。だから365日、1日16時間働く。手抜きすることもない。社内のみならずマスコミにも厳しい。
つい先日、永守さんと久しぶりに立ち話をした。そこで一言「おい!あの番組の続編はつくらないのか?」。最大の褒め言葉をいただいたと勝手に解釈している。
※すべて雑誌掲載当時