【村井】Jリーグは今年で30周年になるのですが、30年前に打ち出した「百年構想」の中には「地域創生」や「サステナビリティ」のコンセプトがしっかり入っている。今でこそ当たり前に語られますが、当時はほとんど提唱する人はいなかった。それでも多くの人を巻き込んで「やろう」と始動したのは、やはり日本を変えたいという強い思いがあったからだと思います。そして、Jリーグの職員には、Jリーグには「始動力」のDNAが刻み込まれていることを伝えたかったのです。

撮影=奥谷仁
撮影=奥谷仁

自分の足りないところをあえて人目にさらす

——そんなJリーグの理念を現場にきちんと伝えるのが朝会の狙いだったと思いますが、どうしてこれを始めようと思われたのですか?

【村井】これはJリーグに「役員の360度アンケート」というのがありまして。チェアマンの僕の場合、同僚の役員や本部長、部長などから私の経営力や執務態度などに関して採点、評価してもらうわけです。ちなみに僕がいたリクルートでは、創業者の江副浩正さんも部下からの評価を受けていました。

自分が思う自分の姿と他人が見る自分の姿は随分と違う。自分を正すには鏡を見なくちゃダメなんですね。Jリーグ全クラブの経営者からも毎年1回、無記名で評価をいただき、結果を公表していました。私はいつも「魚と組織は天日にさらすと日持ちが良くなる」と言って、これを「天日干し経営」なんて呼んでますが、人の目にさらすというのはつらいけど、必要なんです。

で、僕の場合、社内アンケートで課題は「掌握力」と「受容性」であるという結果が出ました。メンバーがどんな仕事をしているかちゃんと把握しているかというのが掌握力。人の気持ち、痛みや苦しみをちゃんと感じているかというのが受容性。現場は「もっと村井さんと話したい」もしくは「村井さんが何を考えているかちゃんと聞きたい」という。じゃあ「朝会」で私の経営観を語ろうか、と。

「何かをやり続けよう」そう決意して始めたのは…

——「じゃあ」とすぐに行動に移すところが、いかにも元リクですよね。

【村井】僕の場合、お客さんに教わった部分もありますね。リクルート時代に人材サービスのお客さんで「ツカサのウィークリーマンション」で知られるツカサグループ元社長の川又三智彦さんとお会いする機会があって。

——「ヨンヨン、マルマル、ワンワンワン。ツカサのウィークリーマンション」のコマーシャルに出ていた人ですね。

そうそう。その川又さんのネクタイピンには小型のマイクがついていて、何か思いつくとすぐ録音するんです。