相手は自分が話したいことを話せて気分がいい。会話全体を支配している感があって満足している。でも、会話をコントロールしているのは、聞き手のこちら。これが、「聞ける人」の技術です。
打ちやすいところに「会話のボール」を返す
住職の説法や著名人の講演会などとは異なり、会話は一方的に聞くばかりというわけにはいきません。会話のほとんどを相手が話していたとしても、軽い返答やリアクションなど、相手が気持ちよく話し続けるための返しは必要になります。
それがないと、
「聞いてないでしょ、あなた」
「つまらないなあ、おまえは」
と、相手をイライラさせたり、怒りを買うことになったりします。
といっても、難しく考えることはありません。イライラした話をされたら「それはイライラするよね」と返せばいい。自慢話なら「それはすごいね」と返してあげればいい。それだけで、相手は気持ちよく話を続けることができます。
上手な聞き手は、テニススクールのコーチのようなものです。
ストロークでも、ボレーでも、スマッシュでも、生徒が打ちやすいところにボールを的確に返してあげる。気持ちよく打てれば、生徒は満足。これと同じように、聞き手は話し手が気持ちよく話せるように返すのです。
会話が打ち明け話や相談ごとになったとしても、基本はテニスコーチ。「解決策を教えてください」「アドバイスをください」と具体的に求められない限り、相手は話を聞いてほしいだけ。「実はね……」「悩んでいることがあって……」と話し始めても、それは「これから話すことを聞いてね」というネタ振りです。
聞き手は、同じように相手が気持ちよく“会話のボール”を打てるように返球してあげるといいのです。そうすると、相手は聞いてくれていることに安心して話を続けることになります。