右肩上がりのクルマ、一向に上がらない年収

自動車業界は典型的なグローバル産業であり、トヨタ自動車や日産自動車など自動車メーカーは世界各国で自動車の生産や販売を行っています。そうなると、コストや利益の計算も世界経済を基準にせざるを得ません。

図表2はトヨタ自動車の1台あたりの平均販売価格と日本人の平均年収の推移を示したものですが、自動車価格が一貫して上昇しているのに対して、年収は横ばい、あるいは下落していることがわかります。

自動車価格が上昇する一方、日本人の年収は全く上がっていない
自動車価格が上昇する一方、日本人の年収は全く上がっていない(出所=『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』)

今後もクルマの値段は上がっていく

経済成長を実現していないのは日本だけで、海外の物価は上がるいっぽうですから、日本国内だけクルマを安く売るというわけにはいきません。そもそも自動車の販売価格は、全世界でほぼ同一となっていますから、国内の販売価格も世界経済に合わせて上がっていくことになります。このため、日本人にとって自動車は年々、高価な買物になっているのが現実です。

加谷珪一『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書)
加谷珪一『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書)

ちなみに、自動車の販売価格に占める原材料価格の比率は、家電などと同様に25~30%程度と言われています。自動車には多くの資材が使われていますが、それ以上に自動車の製造には研究開発費など、多くの先行投資が必要となりますし、工場を建設するにも多額の費用がかかります。工場で組み立て作業を行う作業員の人件費も膨大です。

自動車のコストは原材料だけで決まるわけではありませんが、原油価格が高騰すれば主な材料である鉄鋼のコストも高くなりますし、タイヤに用いるゴム類や、内装として多用されているプラスチック類の価格も上昇します。

自動車の場合、単一の定価というものはなく、基本価格をベースに、購入者の好みに合わせてさまざまなオプションを付ける形で最終的な価格が決まります。したがって同一条件の価格というものがなかなか見えにくいのですが、多くの資材価格が上昇しているなか、自動車についても、今後は大幅な価格上昇があると考えたほうが自然でしょう。

次回は、政府や日銀が金利を上げない理由と、住宅ローン破綻者が多発する可能性について解説します。

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