広告宣伝費に加えて酒税もかかるビール
これらはパンや食用油に比べて、製造工程が複雑である、広告宣伝費の比率が高いという特徴があり、原材料価格が最終価格に与える影響がすこしだけ小さくなります。したがって、パンや食用油と比較すると、値上げのタイミングは多少あとになります。
原材料の比率がさらに低いのが飲料です。清涼飲料水の原材料費は20%程度が多く、ビールは10%台になることもあります。飲料については、テレビなどで多くのCMを目にすると思いますが、味が重要であるいっぽう、製品のイメージも売れ行きを大きく左右します。このため、各社は広告宣伝に力を入れる必要があり、必然的に原材料の比率は下がります。
さらにビールでは、酒税という税金がかかってきますから、メーカーにとっては利益を確保するのがますます大変です。
ビールの場合、販売価格の25~35%が酒税ですから、ビールを飲むたびに私たちは多額の納税をしていることになります。ビールに対する酒税の割合は諸外国と比較すると高くなっており、一部からは引き下げるべきだとの意見も出ていました。ビールの税率が高すぎたことから、税率の低い発泡酒や新ジャンルの商品ばかりが増えるという事態も発生しており、本物のビールを好む消費者からは不満の声が上がっています。
ビールは減税、発泡酒と新ジャンルは増税へ
こうした声を受けて、政府は税率の一本化を決定しており、2023年10月にビール(350ml)は現行の70円から63.35円に減税、発泡酒は据え置き(46.99円)、新ジャンルは発泡酒に統合される形で46.99円に増税されます。
2026年10月には再度改定が行われる予定となっており、すべての税金が54.25円に統一されます。全体としてはビールは減税、発泡酒はわずかに増税、新ジャンルについては大幅増税と考えればよいでしょう。
とはいえ、原材料価格が上がると利益を圧迫するという図式自体は変わりませんから、コスト上昇が激しいと、やがてビールにも値上げが波及することになります。実際、アサヒビールは、スーパードライなど162品目について6~10%の値上げを実施しています。