国産牛や鶏肉、魚介類も値上がりする懸念
牛肉や鶏肉はどうでしょうか。牛や鶏を育てるには、飼料が必要となりますが、飼料の多くが輸入です。小麦の価格が上がると、とうもろこしなど他の穀類の価格も上がりますから、国産の牛肉や鶏肉であっても、やはり海外の物価事情とリンクします。
牛肉や鶏肉の価格に占める飼料などのコストは30%程度となっており、鶏卵になると半分以上が飼料代というケースも少なくありません。寒い地域で鶏を育てている場合、季節によっては暖房が必要となり、電気代や灯油代がかかります。
魚介類にも、同じようなメカニズムが働きます。漁船の操業コストのなかで燃料代が占める割合は高く、最終的な販売価格に対する比率は、肉類などと近い水準になります。もっとも魚介類は豊漁と不漁で価格差が激しいため、必ずしも燃料代が大きな要因とは言えませんが、今の状況が続いた場合、コストが継続的に増えていきますから、その分だけ魚介類の価格も上昇が懸念されます。
スマホやパソコン、テレビも無風ではない
ここまで食品など日常的に消費する製品について見てきましたが、もうすこし価格が高く、かつ購入頻度が低い商品はどうでしょうか。具体的にはスマホやパソコンなどのIT機器、テレビや冷蔵庫といった白物家電、自動車など各種工業製品です。
工業製品の多くは食品とは異なり、製造工程が長く、工場にも多額の設備投資が必要となります。そのため、原材料の比率は食品と比較すると低くなることが一般的です。
しかしながら、自動車などはまさに鉄の塊ですし、冷蔵庫や洗濯機にも大量の金属が使われています。テレビやパソコンの本体は金属に加え、石油由来であるプラスチック類が多用されていますから、原油価格の上昇や円安の影響を受けることになります。
これら工業製品の原材料比率は25~30%が一般的です。工場などにおける人件費や広告宣伝費の比率も高めですから、ある程度までなら、原材料価格が上がっても、他のコスト削減で販売価格を抑制することができます。
しかし、ここまで原材料価格が上がってしまうと、各社のコスト削減努力にも限界がやってきます。ソニーや日立など電機メーカー各社は、2022年4月からの値上げを発表しており、ソニーは各製品について3~31%価格を引き上げました。今後は多くのメーカーが値上げを進めていくと予想されています。