「本質」を議論する作業は、皮をむいていく作業
ですからここで本来議論すべきは、手段である全感染者についての詳細な記録(全数把握)を見直すかどうかではなく、「軽症者・無症状者に対して保健所や医療機関はどこまでサポートするべきか」という医療の本質論だったのです。その「本質」の議論が抜け落ちたまま、「手段」の見直しだけが発表されたため、大混乱が生じてしまったのです。記録を省略化した場合、軽症者・無症状者への対応はどうなるのか?と。まずは患者への向き合い方について結論を出して、そのうえで記録の省略化の議論をすべきでした。
「本質」を議論する作業は、皮をむいていく作業です。枝葉末節をすべて削ぎ落とし、そもそも自分たちは誰のために、何の目的で、何の議論をすべきなのか。この本質を抽出する能力と、異なる見解の論者にオープンの場で議論させるというプロセスを踏む力量がリーダーの「決断力」の源です。
(構成=三浦愛美 撮影=的野弘路)