「若いころから、他人と一緒に何かやるってのが苦手でな」

「おい、野村。メシ食わねえのか?」

大量のウンコを見て、食欲なんぞ消え失せていたが、浜口さんに奢ってもらった手前、食わないわけにもいかない。

「おにぎりいただきます!」
「おう、食え、食え」

にしても、この人はどんな経歴なんだろう。かなりのベテランっぽいけど……。

「浜口さんはどうしてこの仕事を始めたんですか?」
「どうしても、なにも、金をかなりもらえるからだよ」

へー、どれぐらいの額なんだろう。失礼だけど聞いてみよ。

「ちなみにおいくらくらいなんですか?」
「まあ、教えてもいいか。だいたい年に450万くらいかな」

おお、確かになかなかいい金額をもらってますなあ。

「俺の年齢からすれば平均より低いくらいだろうけど、今までに比べれば十分だよ」

ここから浜口さんの自分語りが始まった。彼はいま41才で独身。この会社の前は宅配便の配達員をやっていたらしい。「若いころから、他人と一緒に何かやるってのが苦手でな。なるべく人と関わらない方がラクなんだよ」

勝手に社交性のある人だと思っていたのだが、そうでもないらしい。

「だけど、勤めてた宅配会社が潰れたわけ。それでこの仕事に転職したんだよ」

バキュームカー
写真=iStock.com/Kyryl Gorlov
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「親には本当の仕事は伝えてない」理由は…

一般的には3Kの代表とされる仕事だけど、抵抗はなかったのだろうか。「うーん、俺自身には全くないけど、親には本当の仕事は伝えてないよ」

汲み取り屋ではなく、普通の清掃会社に勤めていると言ってあるらしい。

「やっぱり、世間体はあんまりよくないじゃん。特に母親は自分のことを責めそうなんだよ」
「というと?」
「もっとちがう育て方をしてれば、息子にクソを掃除させずに済んだかも……。みたいな感じで。俺は何も気にしてないのにさ」

なんとも胸に迫る話だ。

「さ、そろそろ、午後の汲み取りに向かうぞー」

よし、あと少しで今日の仕事も終わりだ。ウンコを片づけに行こう。

次の仮設トイレはマンションの建築現場の中だ。

「お疲れ様でーす」

浜口さんが現場監督となにやら話をしている。よし、いまのうちにホースを準備しよう。車体から取り外して、仮設トイレに向かう。我ながら板についてきたぞ。そこに浜口さんが戻ってきた。

「おっ、仕事が早いな。その調子だ」

やった。褒められたぞ。