ゴールドマン・サックスが世界一の投資銀行であり続ける理由
私は東京大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券(FICC部門)に入社しました。ゴールドマン・サックスはニューヨークに本社を持つ外資系投資銀行で、世界を代表する金融機関です。
また、社員への報酬が非常に高額であることでも有名で、学部卒の新入社員で年収1000万円を超え、部長職ともなれば数億円単位の年収が支払われると言われています。当然ですがそこで働く社員は非常に優秀な方ばかりでした。
私は当時、日々彼らが優れたパフォーマンスを安定して生み続ける秘訣を探りながら働き、遂に一連の原理・原則を発見するに至りました。
その答えは単なる地頭の良さや勤勉さ、はたまた運などではありません。その秘訣は“物事の捉え方”にあります。彼らは皆、金融市場に身を置いています。
金融市場に国境はなく、世界で最も賢い人々が知恵と経験を総動員して、0.01%でも高いリターンを求めて24時間争っています。彼ら、そして私も、そのような環境に身を置く過程で、投資の世界における原理・原則、いわば“投資思考”を身につけていたのです。
皆が投資思考に基づいて考え、行動し、会社自体が投資思考を共通言語として運営される。これにより、細かいディレクション不要で、正解に向かって皆の足並みが自然と揃う。だからこそゴールドマン・サックスは、非常に長い期間にわたり世界一の投資銀行であり続けることができたのです。
“投資思考”により高い精度で判断を下し続ける
これに気がついた私は、“投資思考”のなんたるかを習得すべく精一杯働きました。その後私はゴールドマン・サックスを退職し、2018年に株式会社X Capitalを創業しました。
現在はコンサルティング事業を中心に行い、将来的には自己勘定での超長期投資により企業体を構築し、日本の企業価値向上に資することを目指しています。
創業以来現在まで代表を務め、日々多くの意思決定を行っていますが、振り返るとゴールドマン・サックスで投資思考を学び取っていたからこそ、高い精度で判断を下し続けることができていると感じます。
誤解のないように説明しておくと、ゴールドマン・サックスでは、全員が投資家として働いているわけではありません。私自身の仕事の内容も機関投資家を対象とするセールスであり、直接投資業務を行っていたわけではありません。
皆さんが本書を通じて投資思考を身につけ、投資思考を実践することで、世の中を誤りなく認識し、誤りのない意思決定が行えるようになっていただければ幸いです。そしてそれさえできれば、誤りを犯してしまう多くの人のパフォーマンスを大きく上回る成果を残すことができるはずです。