野菜はスープにして免疫力アップ

——新型コロナの対策として免疫力向上はよくいわれますが、野菜スープはなぜ有用なのでしょうか。

「免疫力をアップさせるのは野菜に含まれる多糖類なんですね。食物繊維やでんぷん、セルロースなどの仲間の物質がそうです。たくさん含まれているのは野菜のなかでもきのこ類、それに海藻類です。有名なのがサルノコシカケですが、しいたけもいいですね。多糖類を一滴入れるだけで血液中の白血球の一種であるマクロファージが元気になって、バクテリアを攻撃してくれます。多糖類にはそういう作用があるのです。

それだけではありません。多糖類は腸管から吸収されて肝臓経由で免疫系に行くルートと、腸内の善玉菌を増やして間接的に免疫細胞に届くルートがあります。腸内細菌のなかでも善玉菌は多糖類が大好きです。逆に悪玉菌は、肉のようにアミノ酸の多いものを好みます。免疫細胞の7割は腸にあって、特に善玉菌がそれを活性化しているのです。多糖類は腸内細菌を元気にすることで、間接的に体全体の免疫力をアップさせていると言えます。

ただし、多糖類を吸収するのにも加熱する必要があります。でんぷんを考えてください。粉末のでんぷん(片栗粉)を水に溶かそうと思っても溶けませんが、加熱して初めて水になじんできます。寒天もテングサもそうです。加熱しないと溶けないのです。溶けないと腸内細菌の栄養にはなりません。私は野菜スープに、しいたけやまいたけなどのきのこを入れていますが、野菜スープで免疫力を高めておけば、たとえ新型コロナに感染しても、早い回復が期待できます」

野菜スープの抗酸化力は生の10倍から100倍

——どのような野菜を摂ればよいのでしょうか。たとえば、先生は普段どんな野菜スープを摂っていますか。

「野菜スープは毎日飲んでいますが、だいたい10種類の野菜を入れます。包丁で小さく切って、30分から40分ほど煮れば、野菜の細胞壁が壊れて中から抗酸化物質などが溶け出てきます。スープにはビタミンCやK、葉酸、ミネラルなども豊富です。これらが活性酸素を消去する力は、生野菜をすり潰した汁よりも、10倍から100倍も強いのです。ビタミンCなどが熱に弱いと心配される方もおられますが、野菜に含まれる抗酸化物質で安定化するため、加熱しても問題ありません」

「私の場合、スタンダードに入れるのは、たまねぎとトマト。そのほかにレタスとかクレソン、大根の葉、パセリなどで、無農薬だったらキャベツなどは外側の緑の濃いほうがいいと思います。ここは硬いので適当に切って油で炒め、スープに入れます。

たとえば、大根やにんじんでも、根っこの可食部よりも葉っぱのほうが抗酸化物質は多いのです。捨てるのはもったいないですね。大根やセロリを買ったときに、硬い緑色の濃い葉っぱがついていたら、オリーブオイルか菜種油で炒めるのです。

これをスープに入れて煮込めば、すぐに柔らかくなって、旨味はワンランク上がります」

オリーブオイル
写真=iStock.com/dulezidar
※写真はイメージです

「普段から抗酸化成分を十分摂ることによって、ウイルスに感染しにくい体をつくっていくことが大切です。それは同時に、がんになりにくい体づくりにもつながります。また、トマトなども生で食べるより、油で炒めて食べると吸収率が4倍も高くなります。トマトを加熱調理するとわかりますが、トマトの色が油に溶けてオレンジ色になっていますね。あれはトマトのリコペンが油の中に溶け出たからです。生で食べると吸収されにくいのですが、油で炒めると腸管からよく吸収されるのです」