目指しているのは「町の八百屋さん」
この問い、こちらからのものだった。ある30代女性が「なぜスーパーで買えば十分な野菜を、百貨店で売るのかわからない」と言うのを聞き、虚を突かれたのだ。61歳の私は時々デパ地下で野菜を購入するし、知り合いが買っていることは冒頭で書いた。このギャップを石渡さんに伝えたのだ。
「なぜ野菜を売るのかと聞かれたのは初めて」という石渡さんは、スーパーとの差別化が難しいと語り、「だからわれわれが目指すのは、町の八百屋さんです」と続けた。
え? 八百屋さん? 昭和の家族経営な感じの? だとしたら、今では都内の大きな商店街にあるくらいで、どんどん減っている。それがなぜ、目標に?
「八百屋さんには、店員さんがいます。話しかけられたら、ちゃんと答えられる人たちです。スーパーにはいませんよね」
スーパーとの大きな違いは「はずれがない」こと
枝豆の話になった。スーパーだと1袋298円でも、高島屋は398円や580円といった価格で販売している。大きな違いは、スーパーはポップに値段が書かれているだけ。高島屋には販売員が売り場に立っていて、一番おいしい時期の産地を取り揃え商品ごとに味やコクを説明する。天候が野菜の価格にどう影響しているか、次においしくなる産地はどこかも紹介できる。
要は極力はずれをなくして、満足してもらえるおいしい商品を提供すること。こうした知識や、商品に基づくきめ細かい説明で信頼を勝ち取り、リピーターを増やしていくという。
思い出したのが、お盆前に訪れた夕刻の新宿店の光景だ。エリンギ、ヒラタケ、しいたけ、ブナピーとキノコ4パックの詰め合わせが299円(税込)で売っていた。「見切り品」ではあろうが、新鮮そうに見える。料理好きの高島屋愛好家の1人が「夕方に出る『キノコセット』と『野菜セット』を見つけたら即買い」と言っていたものに違いない。
近づくと女性店員が「冷凍保存、できますよ。必ずほぐしてからで」と説明してくれた。少し離れたところには、300グラムの枝豆が2袋で299円(税込)のコーナーも。こちらでは男性店員が「茹でて冷凍してもおいしく食べられます。固茹でで」。キノコと枝豆、どちらも購入した。