ロシアは北朝鮮の制裁決議に拒否権を発動するかもしれない

対日戦争という共通の記憶が、ロシアと北朝鮮の友好協力関係の基礎であるという歴史認識が、ここに示されています。加えて〈われわれが共同の努力によって、総合的かつ建設的な双務関係を引き続き拡大していくものと確信する〉という表現によって、ロシアが北朝鮮に協力する姿勢を明らかにしています。

では具体的に、何に協力するのか。考えられるのは、核実験です。これまで北朝鮮の核とミサイル実験に関しては、ロシア、アメリカ、日本、韓国、中国が連携して牽制してきました。

しかしロシアは、ウクライナ戦争によって、アメリカ、日本、韓国を非友好国としました。北朝鮮は数少ない友好国ですから、仮に核実験を再開しても「核の拡散はよくない」という形だけの非難にとどめるでしょう。国連安保理の制裁決議でも、拒否権を発動する可能性があります。

その意味でも現在の国際情勢は、北朝鮮を利する形になっているのです。日本の報道からでは、現状がよく見えません。北朝鮮がフリーハンドで核を持つ状況になれば、日本にとってはかなり面倒な事態です。

北朝鮮から武器の買い付けも

ロシアが武器不足に陥っていて、北朝鮮から買い付けようとしている、と報じたのは米紙ニューヨーク・タイムズです。

同紙によると、米政府当局者は、米主導の制裁の効果でウクライナ侵攻を維持するロシアの能力が低下し始めたとの見方を示しているという。

この報道について米当局者はメールで取材に対し、正確と認め、購入は「ウクライナの戦場で使用するため」と指摘。ロシア軍が「輸出規制や制裁の影響もあり、ウクライナで深刻な供給不足に見舞われている」ことを示していると言及した。(9月6日・ロイター時事

事実だとすれば北朝鮮は、自国が危機に瀕した際にロシアの支援を得るため、ロシアの国際的な孤立につけ込もうとしているのです。実に強かな国です。

(構成=石井謙一郎)
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