1回戦敗退で何が成長できるのか

高校野球は地方大会からトーナメントで争われる。全国半数のチームが1試合で姿を消すことになる。全国大会も同様だ。これは非常にもったいない。

サッカーの元日本代表監督イビチャ・オシムも、同じトーナメント方式の高校サッカー選手権を見て、「全国各地からチームが集まるのに、なぜ1試合負けただけで、すぐに帰らないといけないんだ。せめて予選リーグをしてからトーナメントだろ。世界中を見渡しても、こんな大会方式を採用している国はないぞ」と憤慨したという。

野球でも同じことが言える。選手やチームの“成長”のためには、部分的にリーグ戦を採用してもらいたい。たとえば、地方大会は近隣の4~5チームで、全国大会は4チームのリーグ戦を行った後、トーナメント戦に入っていく。どのチームでも数試合の公式戦をこなすことができれば、さまざまなことを試せるし、補欠の出場チャンスも増えるはずだ。

市和歌山 vs 花巻東の試合
撮影=プレジデントオンライン編集部

甲子園は1回戦から生中継する必要があるのか?

高校野球は地方大会からローカル局が生中継して、全国大会はNHKが1回戦から生中継している。ちなみに甲子園とほぼ同時期に行われるインターハイの男子サッカーは決勝戦のみNHK BS1で生中継されるだけだ。いかに高校野球が“優遇”されているかわかる。

同じ野球ではNPBの巨人戦が1990年代まで20%近い視聴率を誇っていたが、近年はゴールデンタイムから姿を消しつつある。夏の甲子園決勝の視聴率は1980年代前半まで40%を超えることも少なくなかった。年によって盛り上がりは違うものの、NPBと同じように視聴率は徐々に低下している。

近年は若者のスポーツ観戦離れが進んでおり、なかでも野球は「試合時間が長い」という理由で敬遠されているという。高校生は夏休み期間とはいえ、甲子園を1回戦からテレビ観戦しているのは暇を持て余している60歳以上がメインになるだろう。

そんな状況でもNHKが生中継を続けている大きな理由は高校野球に「放映権料」が発生していないことが挙げられる。日本学生野球憲章では「学生野球が商業的に利用されてはならない」と定められており、実費以外の金品の提供を受けることができないのだ。ただし、70年以上前に定められたルールだけに改める必要があるだろう。

ちなみにNCAA(全米大学体育協会)はコロナ禍前、年間10億ドル以上の収益を得ていた。そのなかで最も大きいのが人気種目の放映権料だ。2010年には2024年まで約15シーズンで総額108億ドルの放映権契約(男子バスケットボールの全国トーナメントの放映権)をCBS+TBSと結んだと報じられている。

国も競技も異なるので一概には言えないが、日本高等学校野球連盟も「放映権料」を定めて、大会で得た収益金を主役となる球児たちに還元すべきだろう。野球は庶民のスポーツから「お金持ちのスポーツ」になりつつあるのだから。