茨城県の数字の書き換えは確信犯的
——県議会での指摘を受けて、茨城県が2018年に実施した避難所面積の再調査では、トイレや玄関などの非居住スペースを除いた数字を出すよう市町村に指示しておきながら、自分たちは非居住スペースを含む総面積の数字に書き換えたりしています。杜撰を通り越して、本気で過大算定を改めるつもりなどなく、形ばかりの計画で良いからとにかく作ってしまえ、と考えているとしか思えません。
「杜撰というのは怠慢ゆえのうっかりミスですが、過大算定になると知りつつ意図的に数字を書き換えているなど、ある意味では確信犯的なところがある。策定プロセスを公表しておらず、途中で修正する復元力が働かなかったことは大きな問題です。避難者全員を収容できないことが明らかになると計画自体が瓦解しかねないため、隠して数字を書き換えたのでしょう」
——実効性の有無以前の問題ですね。これでは検証などまったくできない。
「そうです。避難計画がなければ再稼働が認められないということになったので、作っていますが、どう作っても実現不可能な避難計画になる。だから机上の空論、絵に描いた餅と同じです。骨抜きよりもっと悪質で、官僚の作文によって実効性を虚偽的に作り出している。
避難計画には実効性がありますよと安心材料を県民に提供しているつもりでしょう。根拠となるデータを国も県も隠すとなると、まったく検証ができない。安倍政権で相次いだ公文書スキャンダルと同根です。旧日本軍の役人たちが鉛筆をなめて勝手に戦果を水増しし、損害を小さく見せたような話です」
避難計画は再稼働するための方便
——役所は「核燃料がある限りは危険がある」という論法で、避難計画が再稼働とは無関係であるかのように装っています。しかし再稼働すればリスクは格段に増します。極端なことを言えば、再稼働しなければ良いだけなのですが、そう指摘されないよう装っているように見えます。
「確かに稼働していなくても事故は起きますが、運転しているとリスクは格段に大きくなる。それは言わずに、『核燃料があるから避難計画に協力してください』と迫られると、避難先の自治体や住民は『それならいいよ』と受け入れざるを得ない。そうすると、原発を再稼働するときに反対したとしても、『避難計画を受け入れただろ』と反論を受けてしまう。
こうした詐欺的な手法を『フット・イン・ザ・ドア』と言います。何かを売りつけるときに、ドアをノックして、開いた瞬間に足先だけ差し込んで、断れない状態にしてしまう。避難計画は再稼働するための方便ですよね」