訴訟社会が騒ぎを大きくした

バイエル社は、最大109億ドル(約1兆1670億円)を支出してアメリカ国内のラウンドアップ訴訟を終わらせると発表した。

ただし和解が責任や過ちを認めるものではないとし、今後もラウンドアップ(と類似する商品)の販売を継続するという。

そもそも12万5000人という原告の大多数は、裁判に参加したら賠償金が取れると、ネットやテレビ、ラジオのコマーシャルにより集められた。訴訟社会であるアメリカならではの現象だ。

賠償額も、世界的企業であるバイエルの営業利益から賠償金請求額を導いたから巨額になった。

会社は、発ガン性の有無で争うより、裁判の継続によるイメージ棄損を恐れて和解に持ち込んだのだろう。

日本でもグリホサート系やジカンバ系の除草剤は使われている。

農薬も除草剤も、開発過程では医薬品なみに毒性はもちろん環境負荷なども厳しく検査が行われる。

また最近では分解機能も重視されていて、短期間に毒性が消える農薬が主流化した。多くが散布後1カ月、あるいは数週間で毒性が消えるという。なかには数時間で消えるものもある。

使用量や方法が重要

私は、農薬を大量散布してもよいとは思わない。しかし使用禁止すべきとも思わない。人体に影響がないレベルで病害虫を抑えて収穫を確保できるのなら有り難い。除草剤も同じだ。

田中淳夫『虚構の森』(新泉社)
田中淳夫『虚構の森』(新泉社)

ようは使用量や散布の仕方、時期……などが重要なのだ。

農薬を不安がる消費者も、多くは日常生活で胃薬や風邪薬、頭痛薬、そして合成されたビタミン剤などを気軽に摂取している。風邪薬を適正に飲めば風邪を早期に治してくれる。だが大量に摂取したら死ぬ。農薬も同じなのである。

もう1つ付け加えると、農薬・除草剤の真の怖さは、作物への残留ではなく散布者への曝露だ。適切な散布方法を取らないと、高濃度の薬剤を散布者が直接吸い込む恐れがある。

その怖さに比べると、農作物への残留分など比較にもならない。

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