日本でも2018年にJR九州が線路脇の雑草対策に散布したら、近隣の農作物が枯れてしまった事件がある。
この被害に対して、ジカンバを新たに売買できないようにしたのが前者の判決だ。
ちなみにスーパー除草剤はほかにもいくつかあるが、そちらは禁止されていない。
一方でグリホサート系除草剤は、早くから発ガン性の恐れを指摘されて反対運動が起きていた。日本でも、とにかく危険と思っている人が多い。
その根拠は、2015年に世界保健機関(WHO)の国際ガン研究機関がグリホサートを「人に対しておそらく発ガン性がある」と分類したことだ。そのためカリフォルニア州法によって、発ガン性がある化学物質を含む製品への警告文の表示を義務づけた。
また消費者12万5000人が、9万5000件もの訴訟を起こしたのである。
ところが前述の判決は、発ガン性の危険表示義務を否定した。
アメリカ環境保護庁やWHO内の別機関など世界中の研究機関が「グリホサートの発ガン性を示す証拠は不十分あるいは存在しない」と先の報告を覆し、表示義務もなくしたのだ。
裁判結果を意外、あるいは不満に思う人は多いかもしれない。しかし、判決は専門家の研究に基づいているのだから陰謀論に与すべきではあるまい。
細かなリスク評価は難しいのだが、有意の発ガン性自体は否定されたのだ。
ダイオキシンの毒性は過大評価
このような評価の逆転はいくつも起きている。
合成甘味料チクロは、アメリカの食品医薬品局が1969年に発ガン性などを疑い禁止になったが、その後追試でいずれも否定された。
現在では世界中で使われているが、日本では今も姿を消したままだ。
最近では、「史上最悪の毒物」と言われたダイオキシンの毒性が過大評価だと訂正されたし、環境ホルモン(微量の合成物質が、動植物のホルモンと同じ効果を発揮して自然界を攪乱するという説)の存在がほぼ否定された。
ミツバチ大量死の原因とされる農薬ネオニコチノイドも評価は定まっていない。