モチベ減退 CASE1

やらなきゃいけないのはわかっているけれども……直前にならないと火が付かない

締め切り直前にならないとやる気が出ない……実はそれは当然なのです。というのも人間の脳は「現状維持を好む」という性質を持っていて、何かを始めることは何もしないでいるより心理的ハードルが高く、つい「面倒だな」と感じがちなのです。

とりわけ「やっても何もいいことがない」と感じている場合は報酬系が弱いので、やる気が出ません。

会社から「この資格を取れ」と言われても、「取ったって別に給料は上がらないし、ただ忙しくなるだけだよな」と思えば、やる気は出ませんよね。

こうした場合、1つの方法として、「自分自身でご褒美を設定する」という手があります。資格試験の勉強であれば、「無事に試験に合格したら旅行に行こう」と決めて、それを楽しみに勉強する。「それをやるといいことが起こる」と感じられる決め事を自分でつくるのです。要は「どうしたら報酬系が機能するか」を考えるわけです。

やらなければいけないのにやれない場合、1つの要因として、「手ごろな目標がない」という可能性があります。

人は「これは難しそうだ」とハードルを高く感じると、「面倒だ、やりたくない」という気持ちになります。

物事には短期的な目標、中期的な目標、長期的な目標がありますが、長期的な目標とは最終目標であり、それだけ見ていると「ここまでやらなきゃいけないのか……面倒くさい」と、つい思ってしまいがちです。

そこで、たとえば「1カ月後までに50枚のリポートを書け」と言われたら、「1日あたり2枚書けばいいんだ」と小分けして考える。そうすると「1日800字書くだけなら、それほど大変じゃないな」と気が楽になってきます。長期的な目標を短期的な目標にブレイクダウンすれば、手をつけやすくなる。達成した後のご褒美があればなおよしです。

もう1つ。みなさんには「面倒だと思って敬遠してきたけど、ちょっとやってみたら、なんだかやる気になってきた」という経験はありませんか?

実は人間の脳には、「何もしないと興奮しない」という性質があって、何もやっていない状態からやる気を出すのは難しいのです。そこで体を少し動かしてやると、皮膚や眼球から脳に刺激が入ってきます。

すると脳の側坐核という部分が反応し、神経伝達物質の1つアセチルコリンの分泌が促されます。アセチルコリンには人に積極的な行動を起こさせたり、集中力を高める作用があり、結果として「動き始めただけ」で、やる気が湧いてくるのです。これを「作業興奮」と呼びます。例えて言えば、車のアイドリングのようなものです。

ありがちな「やる気が出てからやる」という発想は、実は順番が間違っています。物事は始めることによってハードルが下がるので、なかなかやる気が出ないときこそ、「とりあえず5分だけ」と、机に向かってみましょう。

1度行動を始めてしまえば、その現状を維持することは変えることより楽なので、「止まろう」という気持ちよりも「前に進もう」という気持ちが勝ってきます。「とりあえず、ここまで終わらせようか」といった目標も出てきて、それもやる気につながります。

そして気がつくと、「参考書の見開き2ページを読み終えた」とか「問題が1問解けた」といった、小さな成果が出てきます。すると脳は達成感を感じてドーパミンを放出、それがさらなるやる気につながっていくという、いい精神的サイクルが生まれるのです。

【原因】「ご褒美」不足
【対策】短いスパンで目標を設定し達成感を頻繁に味わう