そして、面白いことをした家来には褒美を与える、気前のよいところがある。他にも、“蹴鞠百日チャレンジ(百日の御鞠)”というイベントを開催している。
『吾妻鏡』には、頼家と取り巻き達が蹴鞠を何日に何回やったのか、こまめに記録してある。例えば、
初日の旧暦7月6日スタート
旧暦9月15日……回数多くなかった
20日……700回
旧暦10月1日……360回
21日……950回
(中略)
建仁2年(1202)
旧暦9月10日……朝270回/160回
昼280回/230回
夕130回/390回/550回
15日……230回/160回
といった具合である。
ここまで克明な記録を残すとは、『吾妻鏡』の作者、実は蹴鞠百日チャレンジを楽しんでいただろ。
ヤンキー兄ちゃんのノリ
さて、蹴鞠百日チャレンジ終了後、伊豆や富士山麓へ狩りに行って洞穴を見つけるたびに、頼家は取り巻き達に命じて洞穴探検チャレンジをさせている。
チャレンジ企画が大好きなのか、頼家。たくさんの友達とつるんでアウトドアにふけって、やんちゃするのが大好きとは、ちょっと昔のヤンキー兄ちゃんと変わらない。
例えば、先述の蹴鞠百日チャレンジは、現代の感覚に置き直せば、「勉強をさぼってサッカーのリフティング回数自己ベスト更新に夢中!」ということになる。
洞穴探検チャレンジは、舎弟達へ度胸試しと称して心霊スポットへ行かせるヤンキー兄ちゃんのノリに近い。もし、現代に頼家がいたら、心霊スポットの空き家の壁に「禍魔苦羅罵駆符2代将軍参上!」と、カラースプレーで落書きしていそうだ。
捕虜となった弓の名人である敵の女性(弓で何人も殺っている)を妻に欲しいと頼みに来た武士には、「おまえの女の趣味ってすげえのな!(已に人間の好む所に非ざる)」と、さんざんからかいまくってからOKを出してやる。
これは完全に、“パシリ”の女の趣味をネタに盛り上がるヤンキー兄ちゃんだ。
愛人の「元カレ」を許せず、出兵
さらに頼家には、家来の愛人をさらって自分の愛人にしてしまった逸話がある。
頼家の家来の安達景盛は、都から来た美女を妾にしていた。その評判を聞いた頼家は、景盛に出張任務を与え、その隙にさらってしまった。
これは、ヤンキー兄ちゃんと言うよりも、暴走族の頭首が、手下のオンナを略奪愛してしまったノリに近い。それが原因で暴走族のグループ内抗争が始まってしまったかのように、この後、頼家は美女の元カレが邪魔なので兵を率いて攻めに行く。
正治元年(1199)に起きたこのトラブルは、政子が仲裁に入ったので元カレは血祭りに上げられずにすんだ。1980年代の暴走族漫画にありそうなことを、当時実際にやってのけるとは、妙なところで時代を先取りしているぞ、頼家。
こうした逸話を見ていると、頼家がリーゼントと特攻服姿で、大型2輪車を転がして峠で最速を目指す姿が思い浮かぶようだ。ようするに庶民的な性格なのだ。父や弟に負けず劣らず個性もはっきりしている。