それでもキレそうになる時にどうするか

とはいえ、瞬間的な感情の動きを止めることはできません。どうにも感情を抑えきれない場合は、まずは深呼吸してください。これが一番シンプルです。一息ついてから、今すべきこと、言うべきことを改めて考えてみてください。

そもそもそんな余裕がない場合は、ひょっとしたら疲れがたまりすぎているのかもしれません。十分な睡眠を取って、体を大切にしているでしょうか?

日本のビジネスパーソンには“overachiever”(過度にがんばりすぎる人)が多いような気がします。職場でも家庭でも「私がやらなければ」と強い責任感を持ってがんばりすぎるあまりに、疲弊してしまうリスクが大きいと感じています。疲れていると、感情が爆発しやすくなるので要注意です。

自分自身のためにエネルギーを使う

さらに、これは特に女性に顕著だと思うのですが、どんなに才能豊かで、どんなに聡明で、どんなに輝かしい功績の数々を残してきている人でも、自分の力を確信できずに権限を主張することをためらう傾向が強いように思います。ちなみに、これはアメリカでも顕著です。

たとえば、同じマンションに深夜に大音量で音楽を鳴らしている隣人がいるとしましょう。苦情を言う代わりに、音を小さくしてくれるよう丁寧にお願いしていませんか。あるいは、子どもが野菜嫌いだからといって、食べてくれるよう懇願してはいないでしょうか。

自分が安眠を得る権利、または親として子どもに栄養バランスの取れた食事を提供する責任をないがしろにして、あえて下手に出てしまったり、過剰に謙遜してしまうのです。これは職場においても同じことが起きている場合が多く、他人へ配慮するあまりに自分のエネルギーを優先的に他者へと向けてしまいます。すると、自分のために残されているエネルギーが微々たるものとなってしまうのです。

以前の教え子に外資系企業で働く女性弁護士がいたのですが、彼女は典型的なワーカホリックでした。会社のためにエネルギーのすべてを使い果たしてしまっていたため、プログラムが始まった当時は50歳代にお見受けしていました。

ところが、プログラムが進むにつれて、彼女はどんどん若返っていきました。それまでの彼女は、持てる限りのエネルギーをすべて会社に注ぎ込んでいました。それをやめて、徐々に自分のエネルギーを自分自身に配分するようになってから、彼女はより若く、より魅力的に輝き始めたのです。彼女の年齢は実際30歳代半ばでした。彼女の目覚ましい変容ぶりに、わたしたちはただ驚くばかりでした。

実際、女性・男性を問わず、プログラムを通じてどんどん魅力を増していく人はそう珍しくありません。セルフマネジメントスキルの体得は、一種の非侵襲性の美容整形手術かも、とよく冗談で言っているくらいです。