受注がガクンと減り、景色が一変しました

今回の三菱電機の取材は08年7月末からスタートした。米国サブプライムローンの破綻は表面化していたものの、金融危機がここまで深刻化するとは予想もつかなかった時期に、先に紹介した各製作所の取材をして回った。

それらの現場取材を終え、全体をまとめる形で下村社長にインタビューしたのが10月下旬であった。この時点でもまだ坂道を転げ落ちるような感じはなく、下村自身、社是ともいえる売上高営業利益率5%以上の目標について、「何とかしたいと思っている」と話し、経営の舵取り次第では射程圏内にあるかのようなニュアンスを滲ませていた。

それが一変したのは、11月に入ってからである。世の中の現実ががらりと変化するさまを「コペルニクス的転回」というが、まさにそれを地でいくように経営環境が急変し、三菱電機もその渦の中にいやが応でも巻き込まれていった。

12月末に再度、下村にインタビューする機会を持ったが、この2カ月余に起きた変化の凄まじさをとつとつと語った。

「上半期は増収増益を達成し、実は前回お会いした10月もほぼその線上で推移して、月次ベースではまだ前年比プラスだったんです。ところが11月に入り、自動車各社の減産報道がマスコミをにぎわすようになると、FA機器や自動車関連機器の受注がガクンと減り、景色が一変しました。わずかこの1カ月でこれだけ落ち込むとは想像もできませんでしたし、そのスピードとインパクトの大きさは今までに経験したことがありません」

最も近いところでは、ITバブルの崩壊があり、当時、自動車機器事業本部長だった下村には、「初めて下方修正に追い込まれた」苦い経験がなかったわけではない。しかし、当時はIT関連製品が中心で地域も限られていたが、「今回はすべての製品、すべての地域が影響を受けている。過去の経験則のように、1年待てば、1年耐えれば何とかなるとはなかなか思えない、未曾有の経験をしつつある」と表情を引き締めた。