旧統一教会はなぜ信者に多額の献金を求めるのか。北海道大学大学院文学研究科教授の櫻井義秀さんは「旧統一教会の教義は、堕落したエバがアダムを誘惑した『原罪』を説く。日本はエバ国家であり、アダム国家である韓国に仕えることを要求される」という――。

※本稿は、櫻井義秀『霊と金』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

鮮文大学で開催された統一教会の合同結婚式。文鮮明氏(左)と妻の韓鶴子=2009年10月14日、韓国・牙山市
写真=EPA/時事通信フォト
鮮文大学で開催された統一教会の合同結婚式。文鮮明氏(左)と韓鶴子夫人=2009年10月14日、韓国・牙山市

「すべての人類はサタンの末裔」と説く

旧統一教会の教義は教典『原理講論』に加えて、教祖がこれまでの説教で語った膨大ぼうだいな「御言葉」、及び聖書の参照から構成される。「創造原理」、「堕落論」、「復帰原理」が柱となる。

「創造原理」では、宇宙の根本原理、神の創造目的が説かれ、「堕落論」では不幸の原因である原罪の真相が解き明かされる。

創世記において、エバが善悪を知る木の実を蛇にそそのかされて食べ、その実をアダムにも食べさせると目が開き、2人は裸であることに気づいた。

神は、取って食べるなという神のいましめを破ったので、2人を楽園から追放したという、あの箇所である。

文鮮明は、蛇とは、後にサタンとなる、堕天使にして元天使長のルシファー(旧統一教会ではルーシェルという)であり、人類始祖のエバがそそのかされて食べた禁断の果実とは、ルシファーとの禁断の愛であったと断じる。

神様はアダムが1人でいては寂しかろうと、アダムのあばら骨からエバを作ってくれたのであるから、エバはアダムの伴侶である。

しかるに、エバはルシファーと不倫をおかし、次いでアダムとも慌てて性関係を持つなど堕落した。そして、サタンからエバ、エバからアダム、人類の始祖から子孫たる全人類に神に背いた悪の血統が相続された。人間が罪を犯すのはサタンの血をひく末裔まつえいのゆえとされる。